考えすぎ
坂本と4人で遊びに行った夜。
晴翔は坂本と由莉を2人にするために愛華と反対方向へ歩いて行きました。
愛華「…どっか行くの?」
晴翔「いや、別に…さかもと由莉2人にしたかっただけ」
愛華「…2人をくっつけようとでもしてるのかしら?」
晴翔「え、ああ、まあ…」
愛華「それなら私に黙っていることないじゃない」
晴翔「…ごめん…」
申し訳ないが、今まで通り、と由莉と約束したけど。愛華と由莉をなるべく一緒にいる姿を見たくない。ヒヤヒヤしてしまう。そんな心が狭い自分が情けないが。
晴翔「あの時、さかもに自信つけてやれなかったし…由莉も、愛斗くんといるより…いいだろ……」
愛斗は悪い人では決してないが、あの芸術家といると、向き合おうとすると、全部のエネルギーを使っても足りない。由莉は世話焼きだから余計に。
愛華「そうね…でも。坂本くんとは…復縁しないと思うわよ」
晴翔「え?なんで」
愛華「…なんででしょうね…」
愛華は腕を組んで晴翔を真っ直ぐ見つめます。
何か知っているような顔に見えます。
晴翔「…由莉に、好きな人…いるとか?」
愛華「…どうでしょ?」
もしや、知ってる…?愛華は、由莉が愛華のことが好きってわかっる?その上で、自分を選んでいる?
晴翔「…あい…もしや…好きな人いるの…知ってたの?」
愛華「…言わない」
晴翔「え…なんで」
愛華「言いたくない」
晴翔「お願いだから答えて」
愛華「いや」
晴翔「なんで教えてくれないの?」
愛華「何にも教えてくれない人に言われたくないっ」
晴翔「…っ」
愛華「あい、ただ復縁しないと思うって言っただけよ?…由莉のこと、何も知らないわ」
晴翔はただの早とちり…また勝手に考えすぎた。自分の悪い癖が出た。
愛華「はるは知ってるのね、由莉の好きな人」
晴翔「…いや…」
愛華「いいわよ、別に、言わなくて。」
晴翔「…うん」
愛華「本人から聞けるし」
晴翔「それはだめ!!」
愛華「…どうして…?」
晴翔「…それは…言えない…ごめん…」
愛華に聞かれたら、由莉はうまく誤魔化すだろう。でも、もし、本当のことを知ったら…愛華はどっちを取るの?
愛華は深くため息をつき
愛華「…ねえ、なんで、ごめんしか言わないの?」
晴翔「え、だって…」
愛華「ちゃんと話そって、約束したじゃない…はるにも、言い分あるでしょ?」
晴翔「ないよ…俺の問題だし」
晴翔は下を向き頭を掻きました。
愛華はその視界に無理やり入り。
愛華「私に気遣って、愛華は知らなくていい、やらなくていいって、私のためでも嬉しくないわよ」
晴翔「…ごめん…でも」
愛華「そうやって、すぐ謝るのも嫌っ
あいは…ずっと、はるだけみてたのに、最近のはる、わかんない、何がしたいの?」
晴翔は、ほんとだ、自分は、何がしたいんだ?愛華を安心させる?
いや、全部自分のエゴだ。自分に自信がないから。
愛華に由莉を恋の対象にさせたいための
なんて、言えるわけない。
晴翔が黙っていると
愛華「帰る」
晴翔「お願い待って」
愛華「待ったら、話すの?」
晴翔「……。」
愛華は一万円を晴翔に押し付け
愛華「はるの、タクシー代。早く帰きて、晴翔」
愛華はくるっと背を向け、そのまま1人タクシーに乗り込みました。
晴翔は道にしゃがみ込み
晴翔「…何やってんだろ…俺」
まっすぐ愛華のことだけ考えてれば…こうならなかったかな…
無理やり人を使って、自分が安心したかっただけだ。
あわよくば、愛華が由莉は愛華のことが好きってわかってて、自分を選んでいると安心したいなんて、思ってしまった。
誰にも渡さない…とか、強がりはいくらでもいえた、口では。
根本、何もできてない自分は自分に振り回されて、愛華のこと…見てなかった。
晴翔「さいてーだ…」
人通りの多い道の真ん中で、しゃがみ込んで、ポロポロ涙が、早く止めないと…そう思えば思うほど止まらない涙、
あ、ちょっと…やばい、かも
通り過ぎる人の視線は冷たく刺さります。晴翔は震える手で、荒くなる呼吸を必死に抑えます。
すると、誰かに背中をさすられ
さゆり「晴翔?具合悪いの??」
晴翔「さゆり…?」
大学の友達、さゆりが心配そうに晴翔の傍に寄り添います。
晴翔はさゆりの腕をひき、
さゆり「ちょっと?!なに?」
晴翔「ごめん、ちょっと、しゃがんで…隠して」
しゃがんで晴翔の顔をよく見ました。
さゆりはこんなにボロボロに泣いている晴翔を初めてみた。
またあの子か
いつも悩ませて、時間使わせて、
挙句の果てに、こんなボロボロになるまで泣かせるなんて…
晴翔は呼吸が乱れ、苦しそうに肩で息をしました。
さゆり「晴翔…ちゃんと息して?ねえ!」
さゆりの腕を掴んでいる手が震えて、だんだんと冷たくこわばっていく…
さゆりは、この時の記憶はない、
こんなんで、呼吸が整うわけでも、晴翔が救われる、ましてや喜ぶとも思えない。
ただの衝動だった。
自分でも驚いてるもん。
晴翔「ん…んんっ……」
さゆりは晴翔の口を塞いでいた。
さゆりの口で。
晴翔は顔をバッとそらし、そのまま尻もちをついた。ぷはっと横を向いて息をした。
晴翔「…え…」
晴翔は眉に皺を寄せ、混乱した顔。
さゆりは自分も混乱している…
さゆり「…じ、人工呼吸器…」
苦し紛れに言い訳をした。
こんなの誰が信じるか、
気づいて。言い訳って。
晴翔「…そっか…ありがとう、助かった」
は。これで騙せるわけ?
他の女には何されても、何も感じないの?
もういっそ、ばれたかった。
あなたのことが好きだから。
さゆり「…顔、ぐっちゃぐちゃ」
晴翔「やべー、きったな…ごめん驚かせて」
さゆりはティッシュを晴翔に投げつけ
さゆり「いや、見つけられてよかった、私いなかったらぶっ倒れてたわよ?」
晴翔「本当だ、さゆりでよかった。ありがとう」
晴翔はくしゃっと笑いました。
あー、もうこれだもん。
無自覚女たらし
晴翔「…なんか奢るよ」
と、立ち上がろうとしましたが、ふらつく晴翔。
さゆりが抱き止めます。
さゆり「無理でしょ、晴翔、疲れてるでしょ?帰んなって」
晴翔「…じゃ、明日なんか奢るから」
さゆり「…じゃあ、一緒に、行きたいところある」
晴翔「うん、わかった」
さゆり「…乗れる?タクシー一緒に乗ろ」
晴翔「何から何まで申し訳ない」
さゆり「いいって、頼ってよ、私には」
あの子なんかより、選んでよ、私を。
でも、今日はいい日だ、
晴翔には悪いけど、初めて、助けれたし、
明日のデートまで、約束できた。
それに、キスもできちゃった。
このまま、心まで私のところおいでよ。
さゆり「…私が大事にするから。」
続く