同じ目線で
帰り2人で歩く愛華と由莉。今日は珍しく真っ直ぐ歩く愛華。
由莉「…ほんと…ごめんね」
愛華「由莉にちゅーされるの、嫌だったんじゃないの、びっくりしただけなの」
愛華「私の方こそ…辛い思いさせて…ごめんなさい」
由莉「愛華、私のこと思って、色々考えてくれてたのに、反対のことばっかしてて…愛華…嫌いに…なった?」
愛華「なるわけないじゃない、怒るわよ」
愛華はぷくっと顔を膨らませて見せました。
怒り顔のようだが、かわいい。
由莉「…私、本当に好きだった、愛華のこと、恋愛的にね?」
愛華「…そう…なのね」
由莉「でも…それ以上に、晴翔と幸せになってほしいから…ずっと言えなかった。」
愛華は申し訳なさそうな顔で。
愛華「…もし、言ってくれても、私は晴翔が好きだから…」
こういうとこ、はっきり言えるのも好きなところ。由莉はフッと笑いながら。
由莉「それもわかってた…ねぇ」
愛華「うん…」
由莉「…もっと前に、愛華に思い伝えてても、一緒にいてくれた?」
愛華「…わからない…由莉に辛い思いさせたくないから…距離置いてたかもしれない。でも」
好きな人に振られたのに、近くにいるなんて、いくら一緒にいたくても2人とも苦しくなることぐらいわかる。
愛華「今は、別の誰かさんが由莉のこと、愛してるみたいだから、安心して私も由莉と一緒にいられるわ」
由莉は照れて目を逸らします。愛華は遠くを見つめるように。
愛華「たくさん…今まで、愛斗の恋人が壊れるの見て来た。由莉も、そうなる前に引き離そうって思ったけど…由莉は愛斗のそばにいてくれてた…」
由莉が壊れそうになったのは、何もできないから愛斗が離れてっちゃうって勝手に思ってたから。でも、愛華から見ても、由莉は愛斗の力になれてたみたいで、認めてもらえたきがして、ほっとした。
愛華「…いつ好きになったの?」
由莉「…好きか…わかんないの、好きって何かわからないから、一緒にいようってなった」
愛華「…そう言う考えもあるのね」
由莉「…普通じゃないけど」
愛華「あいね、晴翔との恋愛しかわからないから、由莉に…その価値観押し付けちゃったわよね」
由莉「…愛華には、認めてほしくて…でも、怒られて、腹立って…キスした」
愛華「あら?好きだからキスしてくれたんじゃないの?」
由莉「…ごめん違う」
愛華「やーん…ひどいわっ」
愛華はまたふざけて顔を膨らませます。そして急に真面目な顔になり。
愛華「愛斗が本気になるなんて、思ってなかった」
由莉「…それは私も。」
愛華「愛斗の顔見て…おふざけじゃないってわかったの。
由莉のおかげで、愛斗、ちゃんと踊れるようになった。本当にありがとう」
由莉「私、何もしてないんだけど…愛斗くんだから…そばにいるだけでいいって思ってくれるのかも」
愛華はえー?っと顔を膨らませ。
愛華「あいだって、友達以上に由莉のこと大好きなんだから」
由莉「え?」
愛華「中学の頃、由莉が無理やり手を出されたって思っちゃって、2人を引き離した…だけじゃないの」
由莉「……どゆこと」
愛華「由莉が愛斗に取られちゃうって思って、引き離したの。
由莉のこと、独り占めしたかったの、愛斗に取られるの、悔しくて」
由莉「…え」
目を丸くさせている由莉に、愛華は小悪魔的な悪い笑みを浮かべ。
愛華「結局、愛斗に取られちゃったけど!」
由莉は笑いながら。
由莉「なにそれ〜晴翔がいるくせに」
愛華「ふふふっ、今は、由莉も同じでしょ?」
由莉「も〜からかわないでよ」
愛華「…でも、あいのこと、大好きでしょ?」
由莉「当たり前じゃん?」
この話を笑顔で聞けるのは、未来が見えたから。
同じ目線で笑い合える。
この大好きが、同じ意味で捉えられるようになったから。
愛華「…晴翔は、一足先に知ってたでしょ〜、由莉が、私のこと好きって」
由莉「え、なんで知ってるの」
愛華「由莉に嫉妬するし、なるほど、やっとわかったわ」
由莉「…ごめん、晴翔に弁解しといて」
愛華「これではるも安心ね」
爽やかな風が2人の背中を押しました。
愛華「…由莉のこと、いっぱい知れてよかったわ、話してくれて、ありがとう」
由莉「…愛華も、受け止めてくれて…ありがとう…」
由莉は少し涙目になっていました。
2人の隠してた思いを知り、もっと素敵な関係になれる気がしました。
違う場所から同じ目線でお互いを見つめあえる親友に。
温かい家
今日は約束していないから、会えないかな?
そう思いつつ、晴翔の家のインターホンを押します。
『はーい』晴翔の声だ。
愛華「ちょっといいかしら?」
晴翔『あい?空いてるよ〜入っていいよ』
晴翔の家に入ると、美味しそうな匂いがします。
夕ご飯の時間だもんね
愛華「すごい量ね」
晴翔「カレーは大量に作って、ストックするの」
愛華「給食センターみたい」
晴翔「確かに」
袖をまくり、鍋をかき回す晴翔の腕は引き締まってて、筋が見えます。
晴翔「今日、愛斗君の舞台だっけ?どうだった?」
愛華「愛斗踊ってた」
晴翔「え?そうなの?」
愛華「由莉が…愛斗をまた変えてくれた」
晴翔「そうだね…頑張ったね、由莉」
ふつふつと、カレーが煮込まれて、いい香りに包まれます。
愛華「はる」
晴翔「ん?どした?」
愛華「この前、由莉に告白された」
晴翔は動きをピタッと止めて
晴翔「…え?」
愛華「あいも、由莉のこと、独り占めしたいし、頼りにしてたし、大好きだし、とっても嬉しかった」
晴翔「…うん」
愛華「由莉は…長い間、この気持ち、隠してたの…私の前で、ずっと…」
晴翔は愛華に目線を合わせて話を聞きます。
愛華「ずっと…辛かったのかしら…今更…何かできるわけじゃないけど…」
晴翔「うん…そうだね」
愛華も晴翔も、大切な人がいるから、由莉が大事な友達だから、痛いほどわかる。
晴翔「由莉の前では、泣くの、我慢したんだね?」
愛華の綺麗な瞳からポロポロと涙がこぼれます。
大事な人の気持ちに答えられない。好きだけど、違う好きだから。
愛華は晴翔の手を握り
愛華「あいは、由莉には、幸せになってほしいって、ずっと思ってた。由莉を大切にしてくれる人と。」
晴翔「…それが…愛斗くんだったね」
愛華「…知ってるのね?」
晴翔「さかもから、聞いた」
愛華「…そう」
晴翔「俺も、さかもみたいな真面目なやつがいいかなって思ったんだけど…」
愛華「はるも心配してくれたのね」
晴翔「あいの大事な人だし、俺の…友達…だから」
愛華「…ねえ、はる」
晴翔「…ん?」
愛華「由莉と、これからも、一緒にいれるかな…」
いくらさっき2人で笑いあえても、不安になってしまいます。
一緒にいることで、傷つけてしまったかもしれない。笑っている裏に、見せていない涙があったのかも。すんなり受け入れるには一緒にいた時間が長すぎます。
晴翔は火を止めて、愛華の方を向きます。
晴翔「信じよ、愛斗君が、由莉を幸せにしてくれるよ。だから、あいは今までみたいに、友達でいるのが、由莉も望んでるとおもう」
愛華「うん…ありがとう…」
愛華が晴翔にちょこちょこと近づき、ぎゅっと控えめに抱きつきました。
晴翔は愛華を包み込むように抱きしめます。大きな体は愛華の不安も何もかも受け止めてくれるようでした。
一度体を離し、2人は見つめ合います、愛華の少し潤んだ瞳に吸い込まれるように、
キスしようとしましたが、視線を感じて、
晴翔「…ばぁちゃん…」
廊下から晴翔のおばあちゃんがにこにこして覗いていました。
晴翔のおばあちゃん「いいねぇ、はるちゃん、大人になったねぇ」
晴翔「もー…」
晴翔のおばあちゃん「続きしないのかい?」
晴翔「しないって、ご飯食べる?」
晴翔のおばあちゃん「じぃちゃんも呼んでくるからなぁ」
おばあちゃんは嬉しそうにリビングを出ました。
晴翔は恥ずかしくて、はーっとしゃがみました。
晴翔「ごめんね、あい…」
愛華は晴翔に短くちゅっとキスしました。
愛華「すきあり」
そう言って愛華もリビングの席につきました。
晴翔はにやけた顔を隠すように、片手で顔を隠し、
晴翔「もー…あい、お皿持っておいで」
愛華「はーい」
信じよう。そして、大切にしよう。愛華は自分に言い聞かせました。
続く