懐かしの
夕方、待ち合わせ場所に現れた由莉となぜか呼んでない愛華も。
晴翔「え?あい?どした?」
由莉「晴翔と遊ぶって言ったらついてきちゃった」
愛華「はるずるいっ、あいも由莉と遊びたいのにっ」
由莉にぎゅーっとくっついている愛華。
晴翔が羨ましそうに歯をぎりぎり。
由莉はちょっと申し訳なさそうに、でも、にやついています。
愛華「最近遊んでくれないんだもん」
由莉「ごめんって、今度デートしようね〜」
晴翔「デっ!!!」
いつものように言ってしまった。由莉はあ、ごめん…と心の中で謝りました。
愛華は不思議そうな顔をしています。由莉に遊び行く時デートしよって言われてるの、晴翔は前から聞いてなかったかな?
坂本「こ、こ、んにちは」
ガチガチに緊張した坂本が登場。
晴翔「…呼吸できてるか?」
坂本「あ、あ、あ、うん。ありがとう」
坂本をぶんぶん揺さぶる晴翔。
由莉「変わんないねー…」
懐かしいこの感じ。高校の空気が蘇ったようでした。
晴翔は坂本の肩を抱き
晴翔「お前ならいけるからなあ」
坂本「え、何…」
晴翔「お前はいい男だぞ」
坂本「…お、う、ありがとう」
坂本よりも気合が入っているように見える晴翔。
衝動
楽しい時間はあっという間で、いつのまにか外は真っ暗。
帰る頃になると外は雨が降っていました。
そういえば、愛斗は傘を持ってなかったような…
最近一人で行動するようになったけど、心配な由莉。
みんなで駅に向かおうとすると。
晴翔「じゃあ、俺らちょっと寄りたいとこあるから、さかも、途中まで送ってやってな」
坂本「ぇぇ、」
晴翔は由莉と坂本を2人にするために気を利かせました。
愛華「はるどこ行くの?」
晴翔「いいからこっち!」
愛華「やーん」
由莉「愛華〜また学校でね」
由莉と坂本は傘を差しながら並んでゆっくり歩いています。
坂本の心臓は壊れそうなほどバクバクと動いています。
由莉が何気なく話しかけても、緊張して、頷くことしかできず、
今、2人の間には雨の音だけが響いています。
沈黙を切り裂くように、馬鹿でかい声で、
坂本「今日!!…来てくれて…ありがとうございます…」
由莉「…びっくりしたぁ…こちらこそ、誘ってくれてありがとうね…ってかなんで敬語なの?」
坂本「あ、いや…久しぶりで…ずっと緊張してて…」
由莉「そ、どっちでもいいけど」
また、沈黙が流れかけますが、坂本は拳を硬くにぎり、
坂本「…あの…由莉…」
あの頃の呼び方。
由莉「ん?なに?」
坂本「今度…2人で…遊べませんか…」
坂本は顔を真っ赤にして、心なしか、緊張で目も潤んで、握った傘もカタカタ揺れています。
こんながたいのいい坂本が、プルプル子犬のよう。
坂本とは普通の恋愛できる。穏やかな。
……でも
由莉「…さかも…あのね…」
話し始めた瞬間
ガバッ
後ろから誰かに強く抱きしめられます。
力強さとは裏腹に、フワッと赤ちゃんみたいな優しい香り。
由莉「…愛斗くん?」
ずぶ濡れになった愛斗が由莉の肩に顔を埋めています。
気づけば駅の近くの愛斗の稽古場の近くに。
坂本も狼狽えて目を見開きます。
坂本「え?プロデューサー?」
由莉「愛斗くん?どしたの?」
愛斗は黙って由莉をより強く抱きしめます。
坂本は由莉から愛斗を引き離します。
坂本「いきなりなんなんですか」
愛斗は黙って坂本を睨みます。
坂本も睨み返し
由莉「ちょ、ちょっと」
後ろからパタパタ金髪J K姿の夏樹が傘を持って追いかけてきました。
夏樹「愛斗さーん!待って〜」
由莉「…え?金髪J K?」
夏樹(うわ、理玖の彼女の友達のギャルだ)
由莉は夏樹の正体を知りません。
気になるところはたくさんありますが、今は愛斗が心配な由莉。
由莉「…風邪ひいちゃう…早く帰ろ」
愛斗の手をひき、早足で帰ろうとすると、
坂本「待って!」
由莉「…何?」
坂本「…いや、…」
その誰?
聞きたいけれど、嫉妬の気持ちで聞いたらまた前と同じ。怖くて言葉が出てきません。
坂本「ごめん…なんでも…」
由莉「そう…ごめんね、後で連絡する」
由莉と愛斗はタクシーに乗り込みすぐに見えなくなってしまいました。
夏樹「愛斗さん…どしたのかな」
坂本は、夏樹をまじまじと見つめ
この前、会場にこの金髪の子と一緒にいたよな…
プロデューサーの女…とか言われてたよな…
夏樹は視線を感じたのか、少し顔を伏せて、傘で顔を隠します。
坂本「ねえ、君。」
夏樹「な、なんですか」
坂本「君はあの人の彼女さん?」
夏樹「…は?つまんないこと聞くな」
夏樹は数歩進み、振り返って。
夏樹「うじうじしてたら女なんてすぐどっかいっちまうぞーだ」
夏樹はベーッと舌を出し、くるっと振り返って車に乗り込みました。
坂本「…最近の若い子は口悪いのかな」
由莉が大学生になり、もっと羽伸ばしているだろうな…とは思ってたけど。
さっきの男…プロデューサーは…なんか危険な香りがする
坂本「…俺が助けるから。」
続く