次の日

次の日、朝、みんなの準備しなきゃ…と思い体を起こす晴翔。

リビングに向かおうと部屋のドアを開けると、弟の裕翔がドアの前に。晴翔の顔を見て、うわ…っと顔をしかめました。

 

 

裕翔「…うわ…想像以上」

 

晴翔「…なにが。どいて、準備するから」

 

裕翔「寝てろよ、学校も休め」

 

晴翔「は?なんで。」

 

裕翔「…鏡見たらわかるって。そんな顔して、家のこと任せるほど鬼じゃねーから」

 

裕翔にドアを閉められました。

言われたとおりに鏡を見てみると

 

晴翔「…これはやばいわ」

 

自分でもわかるぐらい、明らかに具合悪そう。高3のあの時もこんな顔だったっけ。

あの時も、愛華には世話になったな…

もう迷惑、愛華にはかけたくないから…強くなんないと。

なんでも出来る男になろうと無理しても、強くもならないし、自信もつかなかったけど。

はーっ、とベットにもたれますが、ハッとして。

 

晴翔「あ、やば、今日、荷物…さゆりと約束…」

 

いいや、大学の友達に持って来させよ。約束も…また今度で。

 

 

次の日、愛華はとっっっても不機嫌。
誰とも目を合わせないし、近寄らせない。

由莉はいつも通り話しかけようとしますが

 

由莉「愛華おはよ、昨日楽しかったね」

 

愛華「来ないで」

 

由莉「…え、どうしたの」

 

こんなに不機嫌なのは流石にみたことがない。
いつも誰かと喧嘩しても、由莉にだけはべったりだったのに

 

愛華「なんでもない」

 

由莉「昨日何かあった?」

 

愛華「なんでもないの」

 

由莉「話聞くよ?」

 

愛華「いらない」

 

愛華はそのままツカツカ歩いて行ってしまいました。
由莉はぽつんと立ち止まってしまいました。

 

柚葆「由莉にも手に負えない感じ?」

 

後ろからいつものメンバーが顔を出しました

 

柚葆「今日の愛華どうしたの?めっちゃ怖いんだけど」

 

葉子「なにかあった?」

 

由莉「んー…晴翔と喧嘩でもしたのかな」

 

芽衣「それだけ?じゃなさそうじゃない?」

 

菻「由莉にもあの態度は…相当…だよね?」

 

何かあると1人になろうとするけど、由莉まで避けるなんて。あんな愛華初めてみた。

 

 

愛華はむしゃくしゃして甘いものが食べたくなり、購買に行きました。
隣には井間が。

 

井間「愛華ちゃん、不機嫌だね。今日」

 

愛華「…わかってるなら話しかけないで?」

 

近寄るなオーラ満載の愛華。負けじと井間は話しかけます。

 

 

井間「…ストレスで甘いもの食べるの逆効果だよ?」

 

愛華「…そうなの?」

 

井間「1番いいのは、ちゃんと話して、吐き出すこと」

 

愛華「…」

 

井間「お出かけしよっか?」

 

愛華「芽衣に悪いわ」

 

井間「大丈夫。芽衣にもいっとくから、ね?」

 

愛華「…やっぱり似てるの」

 

井間「なに?」

 

愛華「大人の余裕みせてくるの、お兄ちゃんにそっくり」

 

井間「じゃあ、お兄ちゃんに話聞かせて?ね?」

 

井間はむすくれた愛華を連れ出しました。

ピコン
芽衣に連絡が届きました 

 

芽衣「すごーーーい!」

 

菻「何?」

 

芽衣「井間さんが愛華の話聞きにいくって!さすがわたしの彼氏!人の心に寄り添える素敵な人❤︎頼んでよかった」

 

柚葆「あんたはそれでいいの」

 

芽衣「え?」

 

葉子「2人で出かけられて…嫌じゃないの?」

 

芽衣「え?全然?愛華を頼んだっ!!!あー!よかった、井間さんがいれば安心よ安心!」

 

芽衣のメンタルの強さを一同感心。

 

由莉はなんで、わたしには話せないのかな…怒らせること…したかな、と不安になりました。

 

愛華に合わせて歩くの大変だな。

芽衣とは歩幅もスピードも同じぐらい。

愛華は究極に遅くなったり、ぷらっとどっかいきそうになる。子供みたいに目が離せない。

きっと晴翔はそんな愛華見てて飽きなくて可愛いって思っているんだ。

 

井間は歩いてるだけで疲れそうなので、とりあえず、広場のベンチに座らせて、話をした。

 

井間「…そっか…寂しかったんだよね?晴翔くんに、何もいってもらえなくて」

 

愛華「昔はね、よく喧嘩してたの、アイス選ぶのだけとか。
なのに、今はね、全部我慢するの、かっこつけようとするの、自分が悪者になればいいって思ってるの、それが嫌なの」

 

井間「弱いところも見せてってこと?」

 

愛華「弱いとこ…っていうか、素のままでいてほしいの、私の前では」

 

井間「…それ、多分ね、晴翔くん、どうしても難しいと思う、好きな子にかっこいいところ見せたいもん」

 

愛華「そうなの?昔からなんでも見てきたのに?」

 

井間「だからこそ、強くなったとこ見せたいんじゃない?」

 

愛華「男の子ってわからないわ」

 

井間「そう。だから、ね?何回も言ってあげたらどうかな?」

 

愛華「ふーん…我慢するのが、かっこいいって思うのやめてほしいわっ」

 

井間「ははは、愛華ちゃんかっこいいね、」

 

愛華「…かっこいいのは、人のために一生懸命になれる、晴翔の方よ」

 

井間「…ふふ…それも、いっぱいいってあげて?」

 

愛華「…そうするわ、言わなくちゃわからなそうだものね?」

 

井間「いい子…なんか食べる?甘いのとか」

 

愛華「甘いもの逆効果って言ってなかったかしら?」

 

井間「ちゃんとお話しできたご褒美には効果的です」

 

愛華「なにそれ」

 

愛華はふふっと笑いました

 

 

少しお茶して、帰路に立つ2人。

 

愛華「送ってくれてありがとう」

 

井間「晴翔くんとお話しできるといいね」

 

家に近づき晴翔の家がまず見えてきますが、ドアが開いている、そして見覚えのある女の子がドアの前で話しています。晴翔の大学の友達…さゆりがいます。

さゆりもこちらに気づき、あ、と驚いた顔をしました。すると、ドアからひょこっと顔を出した晴翔。

 

晴翔「え、あい…」

 

晴翔が顔面蒼白でこちらに向かってきます。

さゆりも後を追います。

 

愛華「はる…」

 

晴翔は井間に詰め寄り

 

晴翔「お前、人の女連れて何やってんだ?」

 

愛華「やめて、ただお話しきいてもらっただけ」

 

井間「ごめんね、…実は、彼女に、愛華ちゃんのこと頼まれて」

 

愛華「…そうだったの…芽衣に気使わせちゃったわね…」

 

愛華は晴翔の方を見て

 

愛華「それに、はるだって、女の子と一緒にじゃない」

 

晴翔「必要な道具、届けてくれただけ、学校の」

 

愛華「学校休んだの?」

 

晴翔「あ…いや…」

 

目は腫れてるし、具合悪そう…。思ったより。

 

愛華「また隠すの」

 

晴翔「…大丈夫だから…」

 

さゆり「昨日、晴翔、道で倒れたんです。」

 

後ろからさゆりが割って入ってきました。

 

愛華「…え?」

 

晴翔「ばか、いうなよ」

 

さゆり「晴翔は、あなたに心配かけないように黙ってたんですよ?そんな責めることないじゃないですか」

 

晴翔「いいって」

 

さゆり「いっつも、あなたのわがままに振り回されて、辛い思いしてるの知ってますか?家のことで忙しいのも知ってますよね?なんで助けてあげようって思わないんですか?」

 

晴翔「さゆり、もう」

 

さゆり「別れてください。晴翔はあなたといたら、幸せになんてならないです」

 

晴翔「お前いい加減にしろ。あい、大丈夫だから…」

 

晴翔の声を遮るように

 

さゆり「昨日、キスしました。晴翔に、」

 

愛華は目を見開き、井間はポカンと口を開けます。

晴翔は大慌てで、

 

晴翔「は?あれ、人工呼吸器だろ?」

 

愛華「そんなに具合悪くなっちゃったの?」

 

井間「いや、そういうことじゃないって」

 

井間は思わず小声で呟きます。

 

さゆり「ほら、他の女の子にキスされて、人工呼吸器って思ったり、告白されても冗談って思ったり、自分は人に好きになってもらえるわけないって考えになってるんです。

あなたが晴翔の自己肯定感を下げてきたからこうなってるんですよ?」

 

さゆりは今まで言いたかったことがどんどん溢れてきます。

愛華は黙って聞き続けます。

 

さゆり「大事にできないなら、さっさと別れて解放させて。」

晴翔「やめろって!あいは何もしてないんだって!」

 

晴翔が声を荒げさゆりを止めます。

愛華は黙ったまま、下を向きます。

 

井間「愛華ちゃん、いこっか」

 

いつも通りの声で、井間は愛華の肩を抱き、くるりと晴翔たちに背を向けました。

 

晴翔「おい」

 

井間「今、冷静に話せると思う?」

 

晴翔「…」

 

井間「大丈夫、なんもしないから、」

 

歩き出そうとすると、愛華は井間の手を振り払い、仏頂面でさゆりに向き直ります。

さゆりは足に力を入れて立ちます。愛華は一呼吸置き、

 

愛華「昨日、晴翔を助けてくれてありがとう。」

 

凛とした声で、それだけ言い、さゆりから離れ、晴翔の手を取ります。

 

愛華「井間さん。今日はありがとう」

 

井間「ううん、」

 

愛華「はる、いこっか」

 

晴翔の手をひき、晴翔の家に帰りました。

 

井間「愛華ちゃん…やっぱかっこいいな」

 

さゆり「…ただわがままなだけじゃ」

 

井間「…晴翔くんから、愛華ちゃんの愚痴、聞いたことあるの?」

 

さゆり「…ない。」

 

井間「だったら、側から見たのと、違うんじゃない?」

 

さゆり「…」

 

井間「…そんな難しい恋、辛いでしょ、やめときな」

 

さゆり「でも、好きなんだもん…無理って、わかってるもん…あなたは、簡単に手に入る恋しかしないんですか?」

 

井間「…さあね?」

 

冷たい強い秋の風が、通せんぼしているようでした。

 

 

2人の絆

 

愛華と晴翔は2人で家に入り、黙って晴翔の部屋に向かいました。

部屋に入ると、晴翔は声を震わせて

 

晴翔「…あい、ごめん…さゆりと…」

 

愛華「ごめんなさい」

 

晴翔の声を遮り、愛華が頭を下げます。

 

晴翔「…なんで、あいが謝るの?」

 

愛華「昨日、苦しかったわよね…今は大丈夫?…私がそばにたかった。1人にしてごめんなさい…」

 

辛かったよね…と晴翔をベット上に座らせて、優しく抱きしめました。

 

晴翔「違う、俺が、あいにカッコ悪いところ見せたくなくて、勝手に苦しくなって…それで…」

 

愛華の腕の中でポロポロ涙が止まらない晴翔。また、弱いとこを…昔みたいに。もう見せたくないのに

 

愛華「何がかっこ悪いの?」

 

晴翔「くよくよ悩んでるところとか、今みたいに…泣いてるとことか…自信無くて、不安になることとか…」

 

挙げれば挙げるほど、恥ずかしくなってきます

 

愛華「それの、どこがかっこ悪いの?」

 

晴翔「かっこ悪いじゃん」

 

愛華「たくさん考えて、真剣に向き合ってるから、疲れちゃうんでしょ?かっこいいわよ」

 

晴翔「え?」

 

愛華「だから、悩んでることとか、嫌だったこととか、全部言って。はるが戦ってることに力になれないの、嫌なの」

 

晴翔は人一倍頑張っちゃうし、疲れに気づかない。一個ずつ、私が聞かないと。

 

愛華「今は、何が苦しいの?」

 

愛華は晴翔の背中を優しくさすり

 

晴翔「あいが、離れていっちゃうんじゃないかって…あいに、俺、何もできないから…」

 

愛華「離れないわよ、それに、たくさんもらってる」

 

晴翔「…何?」

 

愛華「あいが、学校で馴染めないときも、パパが仕事で帰ってこない時も、ママが…でてっちゃったときも、ずーっと、あいと一緒にいてくれて、わがまま聞いてくれて、今も、好きでいてくれる」

 

愛華は普段喋らないから気持ち言葉にするのが苦手。でも、晴翔に気持ち、伝わってほしくて出来るだけたくさん思いを言葉にします。

 

愛華「私のこと、何も知らないで、その一瞬だけ機嫌とってくる人はたくさんいるわよ?大学に入ってからも、社交界でも、いろんな人に会ったの。でも、わたしの全部知ってて、そばにいてくれるの、はるしかいない。その証拠に、友達、わたしあんまりいないじゃない」

 

晴翔「それなら。由莉だって…」

 

愛華「…由莉?なんで由莉が出てくるの?」

 

晴翔「いや、だって、由莉の方が…一緒にもいるし、スマートじゃん…こんなくよくよめそめそしてないし」

 

愛華のこと、好きだし…とは言えないけど。

 

愛華「長く一緒にいるから好きになった訳ではないわよ?はるのこと」

 

晴翔「え?」

 

愛華「そばにいてくれたこと嬉しいし、本当に感謝してるけど、あいが、はると付き合いたいって思ったのは、ただ、はるが大好きだから。それだけ。」

 

晴翔は、目をパチパチさせ。ブワっと涙が溢れました。

  

愛華「あいが大好きな晴翔を、はるも大好きになってあげて?ね?」

 

晴翔「…あい…大好き……っ…」

 

愛華は晴翔の頭をぎゅっと包み込みました。

 

晴翔「ねぇ、あい…キス…していい?」

 

愛華「いっぱいして?」

 

晴翔は愛華を膝に座らせます。
愛華は上から晴翔の顔が見えました。
泣いた顔、昔から変わんない、口をギュッとして可愛らしい。
愛おしくてたまりません。

頬を両手に包み、愛華から、そっとキスをしました。

 

 

晴翔「あ、あい」

 

愛華「はる、かわいい」

 

晴翔「…え?」

 

少し不満そうな晴翔。かわいい?

 

愛華「…他の子に、もうキスされちゃいやよ」

 

愛華はほっぺをぷくっとさせました。

 

晴翔「絶対しない…したくもない」

 

愛華「どうだったの?あいのと比べて」

 

愛華は意地悪で、申し訳なさそうにしている困った顔の晴翔で遊びます。

 

晴翔「…覚えてもない」

 

愛華「そうなの?」

 

晴翔「ほんと」

 

愛華「あいがいいの?」

 

晴翔「うん、

 

恥ずかしそうに答えました。顔がもっと熱くなります。

愛華は満足そうな顔をして、愛華はもう一度、キスしようとすると、晴翔が先に首を伸ばし、唇が触れました。

少し唇が離れると、また、次、次と、唇が触れている時間も長くなる。

すると、頭の後ろと背中に手を回され、とすっと、優しく、ベットに倒されました。

ベットの弾みが治ると、熱っぽい晴翔の目がしっかり合います。

 

愛華「…はる?」

 

晴翔の顔が愛華の細い首元へ、
首筋にやわらかい感触が、ジュッと強く吸われ、ビクッとします。

 

愛華「…なあに?はる…っ」

 

晴翔は顔を離し、ニヤッとしながら愛華の首元をさすります。

 

晴翔「あいは肌白いから、綺麗に見えるね…」

 

愛華「…はる…?」

 

晴翔「…あい…」

 

晴翔は愛華と手を絡ませ、まっすぐ見つめ合います。また、唇が唇に近づいて…

 

ガチャ、バーン
ドアが勢いよく開きました。

 

裕翔「にーちゃん!ご飯買ってき…ええええ!!!」

 

裕翔が驚いて尻餅をつきました。いつのまにか学校から帰ってきた裕翔。

 

晴翔は我に帰ります。
愛華を押し倒して、覆い被さっている自分。

 

晴翔「わぁぁぁあ!!」

 

晴翔も驚いて尻餅をつきました。

 

裕翔「女食う余裕あんだったら自分で飯作れよバーーーカ!!」

 

と言いつつ買ってきたおにぎりやらを投げつける裕翔。

 

晴翔「痛っ!…くそ、裕翔…」

 

タイミングわる…いや、待って。
今自分、何しようとしてた…?

焦って愛華を起こします。

 

晴翔「あい…ご、ご、ごめんね」

 

愛華「…しないの?もう」

 

晴翔「…!!!!」

 

そんな潤んだ目で、赤くなったかわいい顔で、言わないでくれっ!!

 

晴翔「…ちょっとごめん!おにぎりとか、食べてて!」

 

晴翔は駆け足で部屋を出てってしまいました。頭を冷やすために。

 

愛華「…お腹すいてないんだけど」

 

愛華はポスっとベットに倒れ、シーツをいじりました。

 

愛華「まだかなぁ」

 

愛華は、甘かった。と思いました。

晴翔は大学に入ってから、あの時のような体調崩しかたしてなかったから、油断してた。

昨日、裕翔に、晴翔がもしかしたら次の日、動けないかもしれないから、家のこと休ませて…って言ったけど。

そんなに、悩んでいるのか。由莉と晴翔に、何があったのかな。急に、坂本くんと由莉の仲取り持ったりしようとして。

気になるけど、愛華が、どうにか出来ることじゃなさそう、頑なに話さないし。

愛華ができることは、晴翔を支えることだけだ。

 

愛華「…あいが隣にいるから。」

続く

 

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