柚葆とだいちの出会い
私は自分で言うのもあれだけど、尖ってた。
髪は金メッシュ。先生にはガン飛ばす。気に入らなかったらサボる。
あぁ不良だ。思い出したくない。
斜に構えてる生徒たちとよく連んで、夜中うろうろしたりしていた。
菻「柚葆〜今日は?夜暇?散歩しよ〜」
柚葆「うん、いいよー」
菻とはずっとつるんでる…ってわけじゃないけど、なんとなく一緒にいることが多かった。
この日も河川敷でお菓子とかジュース飲みながら友達とくだらない話して、盛り上がってた。
女友達「ねえ〜『氷』の話聞いた?」
柚葆「んー?『氷』?かき氷屋でもできんの」
女友達「違うよ〜!男だよおとこ!」
菻「私も聞いたことある〜」
女友達「伝説のヤンキー『氷』って有名だよ?」
柚葆「な、にそれださ…」
女友達「めっちゃかっこいいらしいよぉ〜会ってみたい〜」
柚葆「今の時代ヤンキーなんているのかな」
女友達「柚葆がそれ言う?」
柚葆「え、私はストレスなく生きようとしてるだけ」
みんなでいつも通りなんでもない会話をしていると、
柄が悪そうな男たちが近づいてきました。
男「かわいいね、君たち」
男「お兄さんたちと夜のデートしない?」
柚葆たちはぎゅっと集まって後退りします。
男「怖がらないでよ、楽しいところ連れてってあげるから」
柚葆「いやっ!」
1番小柄な柚葆が腕を掴まれ引っ張られます。
菻「離せ!!!」
菻が必死に抱きついて引き戻そうとしますが、力が敵いません。
男「大人しくしろよ」
他の子も捕まってしまい、本当に連れ去られちゃう…どうしよう
ブルンブルン…バイクのエンジン音が近づいてきます。叫べば助けてくれる…?
柚葆は息を吸い。
柚葆「助けてーーー!!!」
男「黙れ!!」
男にすぐ口を抑えられますが。
バイクが止まった音が。
ザクザク足音が近づいてくる。
だいち「へー、楽しそうにしてんね。俺たちも混ぜてよ」
ウェーブがかかった金髪。着崩した学ラン。舌にピアスを開けた男を先頭に、派手な男子高校生らしいき5人が近づいてきます。
終わった。
こんな派手な音するバイクに乗ってくるやつが、助けてくれるわけなんてない。のに。
男「悪いな、坊やたち。この子は俺らが見つけたから」
男「お子様はもう帰って寝な」
男たちはゲラゲラ笑い声を上げて、茶化すように男子高校生たちを牽制しました。
だいちはため息をついて、
だいち「…ふーん。つまんないなー…」
と次の瞬間、柚葆を捕らえていた男が吹っ飛びます。
柚葆「…え」
だいちはにやりと笑い。
だいち「俺のシマで、変なことしないでよ」
後ろの方でボソッと女友達がつぶやきます。
女友達「…『氷』だ…」
・
みるみるうちに男たちを薙ぎ倒し、柚葆たちは解放されました。
氷とやら、噂通り強いんだ。
柚葆「…あ、ありがとう…助けてくれて」
だいちはふー、と息をつき、柚葆の方に振り返ります。
だいち「ったく、夜中に女の子だけでたむろしてるなんて、危ないだろ」
柚葆は馬鹿にされたきがして、むっとして。
柚葆「別にっ、今日は油断してただけっ普通ならこんな相手全然へーきなんだから!」
と言いつつ、手が震えている柚葆。
本当は怖かった。この町は平和だから、何も起こらないって思ってたから。
だいちはまたため息をつき、柚葆に近づき。
柚葆「?!?!?!」
柚葆の頭を引き寄せ、抱きしめました。
ふわりと香る、爽やかな香り。
同時に周りの女子の黄色い声と男子たちの歓声が耳にキーンと刺さります。
だいち「…泣いていーぞ?」
柚葆「離しなさいよぉ!!」
柚葆はジタバタして逃れました。
抱きしめられたのは初めて。顔が熱くなります。
柚葆「こんなんで泣かないからぁ!!」
半べそで叫ぶ柚葆。
だいちは満足気ににやにやして。
だいち「…いいおもちゃ、見つけた」
柚葆「…は?」
そう言い捨てて、仲間と一緒にバイクに乗って颯爽と去って行きました。
女友達「すごいよ!柚葆!気に入られて!」
女友達「いいなぁ〜氷さんに抱きしめられてたじゃん」
柚葆「…あんなの、子供をあやすようなもんでしょ…」
熱い顔を隠すように少し下を向きます。
整った顔。してた気がする。
暗くてよく見えなかったから。
嘘かもしれない。
まあ、もう関わることないだろうし、どこの高校かわからないし。
とりあえずみんな無事でよかった。
いつもよりくっついて帰りました。
・
次の日、面倒な授業があり、屋上で菻とさぼっていた。
菻「昨日かっこよかったねー」
柚葆「ん?」
菻「氷さん」
柚葆「吊り橋効果ってやつだよ」
菻「顔真っ赤だったくせに」
柚葆「誰でもびっくりするでしょ…」
呑気に喋っていると。
ブルンブルン…バイクの音。やけにうるさいな、こんな昼間に。
あと、なんか叫んでる声も聞こえる。
気になって下を覗いてみると。
柚葆「?!?!?!」
だいちがバイクに跨ったまま手を振っています。
柚葆「こ、氷?!?!」
だいち「おーーーい!こっちこいよー!」
バイクの音に他の生徒も窓から外を覗きます。
これは大事になる…
柚葆は走って下まで降りました。
柚葆「なんなのよ!!!」
だいち「暇そうにしてたな」
柚葆「今授業中なんだけど」
だいち「屋上で?」
柚葆「どうでもいいけど、なんでここに」
だいち「お前に会いにきた」
柚葆「…なんで学校知ってるの」
だいち「制服、どこの学校かなんてわかるから、お礼もらいにきた」
柚葆「え、お礼なんて用意ないからね?」
だいち「ある」
柚葆「え?」
だいちはヘルメットを柚葆に向かって投げます。
思わず受け取る柚葆。
だいちはそのまま柚葆に近づき、抱き上げます。
柚葆「なになになになになに?!」
ジタバタする柚葆をバイクに跨がせて。
だいち「あそぶべ」
ブルンブルンブルン!!とエンジンをかけ、勢いよく発進しました。
柚葆「きゃー!!!」
思わず、ぎゅーっとだいちに掴まる柚葆。
だいち「そーそー、しっかり捕まってなねーー!」
柚葆「降ろしてよおおおおおお!!!」
強引すぎるデートが始まりました。
続く