わからない気持ち

 

朝起きると、起きてからずっと由莉の後ろにくっついている愛斗。

 

由莉「もういいって、大丈夫だから…」

 

愛斗「…痛いとこない?」

 

由莉「ないよ。本当に」

 

本当は少し…いや、だいぶ腰が痛い。というか力が入らない。

記憶飛ばす程抱き潰されるのは初めてだ

気づいたら愛斗の腕の中で眠っていた

 

愛斗「…ごめんね」

 

顔を背中に埋めギュッとまた抱きしめる愛斗。

 

 

由莉(愛斗くん…まさか…いや、そんなはずないよね。)

 

愛斗が自分に好意を寄せるとは、到底思えない。

 

流石に今日の授業は休めないので愛斗を置いて家を出なければ。

 

 

由莉は、大学でなんとか授業を受け、くたくた。

 

同じ授業をとっていた菻は珍しく眠たそうな由莉を不思議そうな顔で覗き込んでいます。

 

由莉「…菻、近いわ」

 

菻「今日眠そうじゃん」

 

由莉「…うん、眠いかも」

 

菻「食堂で寝な〜」

 

食堂に向かうと、いつもの席にいつものメンバーも座っていました。

 

柚葆「あ!ちょうどいいところに!由莉大先生に聞きなよ」

 

葉子「もういいってぇ」

 

大盛り上がりしている柚葆と芽衣、顔を赤くして恥ずかしがっている葉子、そしてぼーっとしている愛華。
なにやら葉子の話題で盛り上がっているそう。

 

芽衣「由莉大先生!女の子からキスしてもいいよねぇ!」

 

葉子「言わなくていいってばぁ」

 

由莉「…なに、中学生みたいな話してんのよ」

 

柚葆「そういう話が楽しいんじゃーん!」

 

由莉「かわいくてたまんないんでしょ?理玖くんのこと」

 

葉子「…ハイ」

 

由莉「好きな時にちゅーしてあげなよ」

 

葉子「ハイ、先生。」

 

芽衣「ハハハ!!!めっちゃ顔赤〜!!!」

 

平和な話題に由莉もなんかほっとしたのと、眠気からふにゃっとした顔でみんなのことを眺めていました。
菻はまた由莉の顔を覗き込み。

 

菻「…ねぇ、さらにさ、色気増し増しになった?」

 

由莉「はい?」

 

芽衣「露出少なくなったのにさらにね」

 

由莉「…前もこのくだりあったね…気のせいだって」

 

柚葆「やっぱり男かぁ!!!」

 

芽衣「今日こそ聞かせてよ!」

 

菻「それまで寝かせないぞ!」

 

3人は身を乗り出して由莉を問い詰めようとします。

 

 

愛華「…由莉のお家にしつけのなってない居候がいるものね」

 

愛華が頬杖をつきながらしれっと暴露。

 

由莉「ちょっと、愛華〜」

 

柚葆「え?ついに男飼い始めたの?」

 

由莉「か、飼うって、そんなんじゃないから」

 

愛華「最近私に構ってくれないのよっ」

 

由莉「それはごめんって」

 

葉子「へ〜由莉も彼氏さんに夢中なんだ〜」

 

葉子の言葉に由莉は一瞬固まり

 

由莉「…彼氏…では…ない?」

 

一同「え。」

 

由莉「え」

 

柚葆「…詳しく」

 

芽衣「まじで飼ってるの?」

 

由莉「あー…ちょっと眠いから帰って寝ようかな」

 

柚葆「待ちなさい!!!」

 

キーンコーンカーンコーン
他の5人は次授業があり、移動する時間に

 

菻「まーた逃げられた」

 

愛華「…また曖昧にして…」

 

問い詰められる前に逃げて来れた由莉。

 

向こうも彼女とか、別に欲しいタイプじゃないだろう。好きになってもらうことしてないし。
愛斗くんに何もしてあげてないし。

 

気まぐれな猫を飼ってる感覚が心地よい。

 

ただ、私をなぐさめてくれてるだけ…だと思うんだけど…。

 

…でも、昨日、私に元彼いたことに…嫉妬してた?

いや、まさか。

 

ただの遊び…だもんね?

 

 

止まってられない

 

その頃愛斗は、稽古中

休憩中、昨日のことを考えてしまいます。
なんで、あんなにいらついたのかな。
由莉に昔ちゃんと付き合ってた人がいたって聞いただけなのに。

 

妹の友達。

 

ただ、居場所になってあげようって思っただけだった。

 

自分の感情が分からず。胸の奥をギリギリ握られてるよう。

 

前髪をかきあげ、深くため息をつきました。

 

愛斗「…はぁ…」

 

何か視線を感じ、その方向へ目をやります。

 

愛斗「…FUYU君、どした?」

 

稽古の休憩で、戻ってきた夏樹(FUYU)

 
真剣な顔でまじまじと愛斗を見ています。

 

夏樹「…今日、一段と色気だだ漏れだなって…研究」

 

愛斗「なにそれ」

 

愛斗はクスッと笑います

 

夏樹「俺、まだガキなんで、愛斗さんから色々学ぼーって」

 

愛斗「そうなの?じゃあ今夜一緒に過ごしてみる?」

 

フッと不敵な笑みを浮かべながら冗談で誘ってみます。

 

真面目な夏樹を見ているとついついかまいたくなる。

 

顔真っ赤にするかな?とか期待していましたが、
夏樹はパァッと顔が明るくなり。

 

夏樹「え?ご飯行ってくれるんですか?行きましょ!!」

 

愛斗「…いいよ」

 

ああ、まだ、この子高校生だ。
純粋なキラキラした目を前に、申し訳なくなる愛斗。

 

自分には眩しすぎるな…

 

愛斗「舞台設営の、ちょっと覗きにもいこっか」

 

夏樹「はい!」

 

 

稽古が終わった後、舞台設営が進んでいる会場へ足を運びました。

 

夏樹は外出のため、いつものJKの変装をしていました。

 

愛斗「お〜いいね…」

 

夏樹「俺の兄貴、建築やってるんですけど、こういうのもやるのかな」

 

愛斗「あ〜確かに…僕の妹の彼氏も、建築系って言ってたかな」

 

夏樹「愛斗さんが舞台セットまでプロデュースする時は兄貴も使ってやってください」

 

愛斗「それは心強いな」

 

すっかり仲良くなった2人。
その2人を見ている設営のスタッフが1人。

 

設営の関係者「おーい、坂本!なにぼーっとしてるんだ!」

 

坂本「あ、すみません…ちょっと知り合いに似てて」

 

設営の関係者「あの人達か?背の高い方は舞台のプロデューサーだろ?」

 

坂本「え?そうなんですか?隣の女の子は…」

 

設営の関係者「…しらねぇな、プロデューサーの女かなんかだろ」

 

坂本「…そっか…」

 

プロデューサー…あの子に似てるんだよな…
元カノの親友。

 

 

 

 続く

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