白黒付けて
愛斗のお気に入りの街の広場でぼーっとする由莉。
ちゃんとやってるかな…
愛華との待ち合わせ。愛斗と、ちゃんと向き合いたいから、舞台終わった後、愛斗と一緒に住んでくれないか、お願いするのだ。
一緒にいたいけど、私は何もできないから…苦しくなるから。少し、距離をもって…
ほっぺたに温かい感触。
愛華「由莉…」
由莉「…久しぶり…でもないね、学校では顔合わせてるし」
愛華「ごめんね、この前は」
由莉「いいの、愛華にも、色々あるでしょ」
愛華「うん…はる、また具合悪くなっちゃって」
由莉「え?大丈夫なの?」
愛華「ええ、とりあえず」
愛華「あの…由莉に相談したいことあるんだけど」
由莉「なに?」
愛華「愛斗、もう、すぐにうちで引き取りたいんだけど」
由莉「え、なんで?」
由莉は慌てて愛華の腕を掴みました。
由莉「やだ…やめてよ…大丈夫だから、もう少しだけ、いさせて…せめて、舞台終わるまで…」
待って、自分が愛華にお願いしようとしてたことじゃん…考えてたことなのに…なんでこんなに慌ててるの?私。
愛華「…おかしいわよ…」
愛華の目がうるうるしてきます。
愛華「愛斗と、一緒にいると…依存するの…おかしくなるから…離れてほしい」
由莉「別に…私が望んで…一緒にいるもん…いいでしょ…どうなったって」
愛華の意見は自分の考えた答えと同じなのに、なんで反発してるの…?
愛華「よくないの、由莉には…普通に…幸せになってほしい」
由莉「…普通って何?」
愛華は黙ってしまいます。
由莉「愛華には…わからないよ。ちゃんと、好きな人に愛されて…私は、一瞬しか誰かの特別になれなかったけど
愛斗くんは…私を…必要としてくれるの」
愛華「…由莉…いるのね?好きな人」
由莉「…いた、今は…わからない」
愛華「…なんでわからなくなったの?」
由莉「その人、付き合ってる人いるの…だあら、諦めたいの」
愛華「…由莉の方に気持ち向けれないの?…あんまり良く無いことだけれど」
由莉「…その2人、大事だから…何もしたくないし…しても、無理、敵わないし」
愛華「誰…?」
由莉「言いたくない…絶対嫌がる」
愛華「そんなわけな…」
愛華には、わかってほしかった、否定されたくなかった。
黙って…欲しかった。
愛華の言葉を遮るように唇を押し付けました。
愛華「いやっ…」
愛華は思わず由莉を押し返してしまいます。
愛華「…由莉…ごめんね…今のは…」
由莉「…ほらね、嫌でしょ…こういうことだから…」
由莉は一度も振り向かずスタスタその場を離れました。
・
愛華はトボトボ家に帰ります。
学校帰りの裕翔が向かいから歩いてきました。
裕翔「あ、にーちゃんの女だ、にーちゃん多分家いるよ…ってえええ?!」
愛華の泣き顔を見てびっくり。
裕翔「にーちゃーーーん!!あいちゃんが!!!」
バタン!勢いよく玄関の戸が開きます。
裕翔「はやっ…番犬かよ」
晴翔「何?!あい!大丈夫…?」
愛華「はる…うううぅ…」
愛華は泣きじゃくりながら晴翔に抱きつきます。
気まずそうに裕翔は先に家に入ります。
晴翔は黙ってぎゅっと抱きしめて、大丈夫、大丈夫と背中を摩りました。
愛華が泣きつかれて眠ってしまうまでずっとそばにいました。
・
愛華の意見は、自分の思ってるのと同じ。依存しないために、距離を置こう。
なのに、何してるんだろ。
愛斗が取られると思って、頭がパニックになった。
まあ、いいか、幸せな元好きだった人を見なくて済むから…
嫌われちゃった…な。
今日は愛斗はもう舞台につきっきりだから帰ってくるかわからない。
自業自得だし。もう…消えたい…
ブーブーケータイが鳴る音。誰かからの電話…相手の名前も見ずに電話に出ます。
由莉「もしもし…」
坂本『由莉?突然ごめんね?今大丈夫…?』
坂本だ。
由莉「…大丈夫…っ…どうしたの?」
坂本『…』
由莉「さかも?」
坂本『泣いてるの?』
あ、ほんとだ。
私、泣いてる。
心の痛みが酷くて、涙に気づかなかった。
坂本『今から行く』
由莉「え、ちょ」
ぷーぷー…電話が切れてしまいました。
…今の状態で…あんまり会いたくないけど…
正義の味方は救いたいのね。
できる限り目を冷やして、外で待ちました。
続く