宣戦布告

愛斗「もう少し、下げられますか?」

舞台準備もいよいよ大詰め。
舞台セットの最終確認に勤しんでいました。
坂本も、作業を行います。

愛斗「うん、そんな感じ…大丈夫」

最終確認も終わり、解散した後。
愛斗はステージから観客席を眺めます。

また、立てる日は、来るだろうか。

坂本「…あの…プロデューサー…」

ステージの下に目をやると坂本が。
由莉と一緒にいた子だ。ここの作業員だったんだ。

愛斗「お疲れ様」

愛斗は優しい笑顔を向けました。

坂本「…あの…愛華ちゃんの…お兄さんですよね?」

愛斗「そうだよ?愛華のこと知ってるんだ」

坂本「高校の、同級生で」

愛斗「へー…そうだったの」

ってことは、由莉とも…同級生か。

坂本「…あの、プロデューサー…」

愛斗「うん」

坂本「…この前、由莉と…あの後どこへ?」

ついに聞いてきたか。
愛斗はにっこりして。

愛斗「おうち」

坂本は目を見開き、

,

愛斗「一緒に住んでるの、いいでしょ〜」

坂本「…由莉は…彼氏いないって言ってましたけど」

愛斗「付き合ってなかったら一緒に住んでちゃいけないの?」

愛斗はぴょんとステージから降りて

坂本「最近、2人でよく会うんですけど。由莉、目とか赤くて、泣いてるんじゃないですか?」

愛斗「最近…?由莉ちゃん泣虫じゃん」

 

坂本「泣いてるとこなんて、見たことないです、付き合ってた頃から」

 

愛斗のまゆがぴくっと動きました。元カレ…こいつか。
元彼、一人だけって言ってたから
他はあそびでも、この子は本気だったんだ…

 

坂本「僕は、由莉を泣かせたりしないです」

 

愛斗「…もったいないなぁ」

 

愛斗は坂本の耳元に近づき

 

愛斗「泣きながらキスをせがんでくる由莉ちゃん、とっても可愛いのに」

 

坂本は咄嗟に愛斗の胸ぐらを掴みます。

 

愛斗「…ねー、いたーい」

 

はっとしてすぐに手を離しました。

 

坂本「…すみません」

 

愛斗「…中途半端な牽制はやめようね〜」

 

愛斗はヒラヒラ手を振って去って行きました。

 

本命だった元カレにも見せてない顔、自分には見せてたんだ〜とご機嫌になった愛斗。

 

…でも、自分のものにしちゃダメだよね。

好きもわからない自分に。

 

由莉の家に帰ると、由莉がパタパタと玄関まできました。

前までお迎えになんてこなかったのに…かわいいな

 

由莉「おかえり」

 

愛斗「ただいま」

 

由莉をフワッと抱きしめて、喉元にキスしました。

 

由莉「…愛斗くん?」

 

愛斗「坂本くんって、施工員と、話したんだけど」

 

由莉はビクッとしました。

 

愛斗「…一生懸命でいい子なんだよね」

 

由莉「…そうだね」

 

愛斗「由莉ちゃんは、そう言う子としか、付き合った、思わないんだ」

 

由莉「…何のこと?」

 

愛斗「元彼、あの子でしょ?」

 

由莉「…そうだよ」

 

愛斗「…悪い子」

 

つーっと首筋をなぞります。

 

愛斗「真面目な子が由莉ちゃんに想い寄せてるのに、僕とこんなことしてるなんて」

 

由莉の首元に何度もキスを落とす愛斗。由莉はビクッと震えます。

 

愛斗「由莉ちゃん、どうしてほしいの?」

 

こんなの、明らかでしょ?
このまま、また流されちゃうのかな…

由莉は愛斗を引き剥がします。

 

愛斗「…由莉ちゃん…いやだった?」

 

愛斗は捨てられた子猫のような目で由莉を見つめます。

 

由莉「…嫌じゃないよ?…ごめん、今日、あれだから」

 

愛斗ははっ!と察して、

 

愛斗「…あ、そっか」

 

由莉のほほを優しく撫でて、ソファに向かいました。

あったかくしよ?とソファに先に座った愛斗がブランケットを広げて、おいで?としてます
横に座り、一緒にブランケットに包まりました。

 

 

由莉「愛斗くん」

 

愛斗「…なあに?」

 

由莉「…明日からだね、舞台」

 

愛斗「うん、まあ、僕は見てるだけだけど」

 

由莉「でも、緊張するでしょ?」

 

愛斗「うーん、そうだね、みんな、怪我なく終わるのが一番」

 

由莉「私も、千秋楽、見に行くから」

 

愛斗「たのしみにしてて」

 

愛斗はおでこにキスをして、由莉の頭ごと抱き寄せて、ぽんぽんと頭を撫でました。

 

温かくて、心地よい。
彼の優しさに完全に依存してる。このままずっと甘えていたい、離れたくない…

でも、愛斗の心は…自分に向くことはきっとないよね。

きっと妹みたいに思ってるんだろう。

 

舞台が終わったら。
この関係、終わらせよう。

前に、進むんだ。

続く

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