依存性

晴翔は歩いていると、変なものを見つけてしまった。

 

晴翔「…何してんの」

 

公園のベンチの背もたれの上を、平均台みたいに歩いている愛斗。

丁寧に靴を脱いで。

 

愛斗「晴翔〜降りれない!」

 

晴翔「…は?」

 

愛斗「こっち来てー!」

 

晴翔「何やってんだ…」

 

晴翔は愛斗に手を差し伸べ、愛斗はその手を取り、ぴょんと飛び降りました。

勢いで愛斗を抱き締めてしまった晴翔。

赤ちゃんみたいな優しい香りがする。

 

愛斗「ありがとう〜」

 

にこーっとやわらかい笑顔を向ける愛斗。

このぐらい愛華もぽやぽやしてたらいいのに、ちょっと漢前すぎるんだよな。

 

 

愛斗「なあに?じっと見つめて」

 

晴翔「いやなんでも」

騙されてはいけない。このニコニコ人間でも、人のことを振り回す、依存させる天才なんだから。

  

愛斗「ねえ、暇?」

 

晴翔「今から帰って。課題やって、ご飯作って…愛華と遊ぶ」

 

愛斗「晴翔くんのご飯食べたーい!」

 

晴翔「え?由莉は?」

 

愛斗「今日はお出かけ〜だって〜」

 

晴翔「愛華来るまでうちいていいよ」

 

愛斗「わーい!」

 

晴翔「そんな美味いもの作れないですよ」

 

踊るように歩く愛斗。

今日は坂本と遊びに行く予定。

のんびり、一緒にご飯食べて、他愛の無い話をした、穏やかな時間だ。

お互い、愛斗のことに触れないようにしていた。

 

坂本「由莉…やっぱり、昔と、あんまり変わってなくてよかった」

 

由莉「そう?私のこと、どう見えてる?」

 

坂本「…大人っぽくて、友達思いで、かっこいいなって思ってる」

 

由莉「なにそれ、めっちゃいい女じゃん」

 

坂本だけじゃない、多分みんな、親も、私は強くて頼れる姉貴肌な人間だって思っているだろう。実際、そうみられたいから、いいんだけど。

坂本が少し息をついて。

 

坂本「前…由莉が一緒に帰った人、いるじゃん、今、俺が舞台施工担当してる公演のプロデューサーなんだよね」

 

由莉「へーそうなの?愛華のお兄さんだよ」

 

坂本「知ってる、晴翔から聞いた」

 

由莉「似てるよね」

 

坂本「うん…その人と…付き合ってたりする?」

 

由莉「…いや…付き合ってないよ」

 

ただ、一緒にいてもらってるだけ。

 

坂本「そっか、なら…よかった、でも、仲良いんだ」

 

由莉「うんまあ」

 

一緒に住んでるって言ったら腰抜かすかな。

 

坂本「でも、あの人といたら、大変じゃない?」

 

由莉「…いや…」

 

自分の方が完全に甘えている。けど、最近必要とされてるんじゃないかなって嬉しい、きっと必要としてくれている。

 

坂本「いや、由莉なら大丈夫なのか。強いもんね、振り回されたりしないよね」

 

由莉「……」

 

坂本「…勝手に心配しちゃった、なんか、不思議じゃん、あの人」

 

由莉「…うん、相当変」

 

坂本「だよね」

 

秋の冷たい風が2人の間を通りました

 

坂本「…また、遊んでくれる?」

 

由莉「もちろん」

 

坂本「困ったことあったら、助けに行くから」

 

由莉「スーパーマン?」

 

坂本「由莉専用のね」

 

坂本は優しい笑顔で由莉を見送りました。

楽しかったな、なんか浄化された感じ。

 

家に着いたら、愛斗に何か作ろうかな。家出る時寝てたし。

家のドアを開けると

 

由莉「ただいま〜」

 

シーン、誰の返事もありません

 

由莉「愛斗くん…?」

 

 

晴翔「別に普通でしょ?俺の作った飯なんて」

 

愛斗「愛華は世界一って言ってたよ」

 

自分の作るご飯は別に美味しいわけじゃない、弟にもいっつも文句言われる。

舌が肥えているはずの愛華はそれをすごく幸せそうに食べる。

 

愛斗「愛されてんね」

 

晴翔「ん?」

 

愛斗「愛華に、愛されてんねーって」

 

晴翔「…いきなりなに」

 

愛斗「小さい頃さ、晴翔よく愛華に花冠作ってあげてでしょ?」

 

晴翔「あー、そうだ、懐かしい」

 

愛斗「めっちゃ大事にしてたから、うちの両親、それで愛華は花好きなんだって思ってさ、生花やらせようとしたの、

そしたらね、花弁ちぎって遊び始めて〜もう周り騒然」

 

晴翔「愛華らしいっすね」

 

愛斗「いろんな人から、誕生日とかおっきい花束もらっても、全部僕にくれるの、だから」

 

愛斗は晴翔のことを見て

 

愛斗「晴翔が思ってる以上に、愛華は晴翔のこと、だーいすきなんだよ」

 

晴翔は顔を真っ赤にしました

 

晴翔「…恥ずかしいこと言わないでよ」

 

愛斗「照れてるう!」

 

 

愛斗は晴翔の頭をわしゃわしゃと撫でていると、ぷるるる、愛斗の電話がなりました。

 

愛斗「あ、由莉ちゃんだ…どした?……今?……晴翔と遊んでた………由莉ちゃん?」

 

晴翔は髪を直しながら愛斗の方を見ました、

 

愛斗「……ううん、ごめんね、戻るよ……うん、待ってて、…はーい」

 

愛斗は電話が終わるなり、上着を着て

 

愛斗「ごめん帰るわ〜ご馳走様」

 

晴翔「由莉なんかあった?」

 

愛斗「いや〜なんか涙声だったから」

 

晴翔「あいつが?」

 

愛斗「由莉ちゃん最近すごい泣き虫なんだよね〜そこも可愛いんだけど」

 

晴翔「…あいつが泣いてるとこなんて見たことないですけど」

 

愛斗「嘘〜由莉ちゃんのいいとこなのに、じゃあね〜今度は僕がご馳走するから〜」

 

晴翔「お構いなく…」

 

愛斗は心なしかウキウキした様子で出て行きました。

 

晴翔「…待って」

 

愛斗「…なあに?」

 

晴翔「あんまり…振り回さないでやって…」

 

愛斗「なにが?」

 

晴翔「由莉…泣いてるとこなんて…見たことないから」

 

愛斗はさっきまでのにこにこ顔から一変し、にやりと微笑み…

 

愛斗「順調だわ」

 

晴翔がポカンとしている間にドアが閉まりました。

 

晴翔「…順調…は??」

 

晴翔は由莉が泣いてるところも甘えてるところも見たことない。

最近泣き虫…って、なんでそんな泣いてんだよ。

 

晴翔「由莉…大丈夫なのか」

 

由莉の家に急いで帰った愛斗。

 

愛斗「ごめんね由莉ちゃん、なんも言わないで出かけちゃって」

 

由莉は目を潤ませて、愛斗に抱きつきました。

 

由莉「いなくなったかと思った」

 

愛斗「いなくなんないよ〜よしよし」

 

由莉「愛斗くん」

 

愛斗「なあに?」

 

由莉「キスして」

 

愛斗「うん」

 

愛斗は軽くちゅっとキスしました。

 

由莉「…もっと」

 

愛斗「甘えたさんなの?可愛いね」

 

愛斗は満足げに笑みを浮かべ、由莉に何度も優しくキスをしました。

 

続く

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