晴翔は、いきなり教室で授業を受けるのはハードルが高いので、
保健室で勉強することにしました。休みながら、少しずつ。
学校に行く、ということに慣れるよう。
昼休みになると愛華が顔を出しに来てくれました。
朝からずっと…とは行かないものの、何日か続けていけるようになってきました。
昼休み、この日も、愛華がひょこっとやってきました。
保健室の先生「ふふふ、仲良しね」
晴翔「……」
愛華「顔赤いわ?またお熱かしら」
晴翔「ち、違う、大丈夫」
保健室の先生「先生少し席外すわね」
先生は気を利かせて毎回席を外してくれます。
晴翔「…みんなに会いたいな」
愛華「クラスの?」
晴翔「うん」
愛華「坂本くんも、由莉も会いたがってるわ」
晴翔「…会いたい」
愛華「呼ぼうかしら?」
晴翔「……うん」
この日は久しぶりに坂本と由莉と顔を合わせることができました。
坂本はボロボロ泣きまくり、由莉はドン引きしていました。
由莉「…なんでさかもが泣くの」
坂本「晴翔〜ううううっ、生きててよかったーーー!!」
晴翔「…大袈裟な…」
坂本「これお祝い!」
購買で売っているプリンが大量。
愛華「ありがとう」
早速蓋を開ける愛華。
坂本「あ、愛華ちゃんにじゃないよ…」
愛華「愛華も食べたい」
晴翔「いいよ、食べて。坂もありがと」
晴翔はまだゆっくりお弁当をもぐもぐしていました。
由莉「お弁当…もしや復活?」
晴翔「元気な時に作り置きして…」
由莉「すごいじゃん」
晴翔「ありがとう」
家に帰ってクタクタになってそのまま眠ってしまったり、体調の波はあるものの、少しずつ安定してきて、
普通の生活に近づけてる。と、自信もなりました。
親も、そんな晴翔に干渉しなくなりました。
ちなみに愛華がガツンと言ったのは、晴翔は知りません。
・
そして、ついに、教室へ行く日に。
坂本は朝から担任に
坂本「次、晴翔に変な茶々入れたら背負い投げしますからね。」
担任「わ、わかったよ、本当、反省してるから」
坂本「本当に?????」
担任「本当!本当!許して本当に」
坂本「みんなも普通にな、普通に!」
由莉「さかもが一番普通じゃないけど…うきうきして」
坂本「だって嬉しいんだもん!!」
クラスから温かい笑いが。
それを廊下で聞いていた晴翔。
晴翔「ーっ、ふぅ」
緊張している晴翔の袖を引く愛華。
愛華「ここまで、これたね」
晴翔「あいがいなかったら…無理だった」
晴翔はドアにゆっくり手をかけて。
晴翔「…ほんとに、ありがとう」
ガラガラガラッ
バッとみんなの視線がドアの方に。
晴翔の表情が若干固まりますが、
フワッと笑い。
晴翔「…転校生みたいだね」
この病気はまだ治ってないし、今後治るかもわからない。
受け入れなれない日もある。
できなくなったこともたくさんある。
今も自分に自信が持てない。
でも、少しずつ自分を騙して、やっていくしかない。
晴翔は、愛華のように、理解者がいて。なんとか、日常に溶け込み、前に進むことができている。
このような人がいると知ってもらえるだけでも、
救われるものです。
坂本「晴翔と教室にいれるの…幸せだ…」
晴翔「…大袈裟な」
愛華「私はどこでもはるといられたら幸せよ?」
晴翔は照れておにぎりで顔を隠します。
坂本「そう言えばずっと一緒にいたの?」
晴翔「…ハイ」
愛華「一緒にお昼寝したわね」
晴翔「いいいいい、言わなくていいんだよ?」
坂本が乙女のように口を押さえ。
坂本「もしかして…この期間に…ついに…付き合った…とか??」
晴翔「な!!!」
晴翔は焦りまくる、た、確かに、好な子って言ったし…ほっぺとおでこにだけど…キスも…これは付き合ってるってことで…いいのでは??
晴翔「じ、実は…」
愛華「付き合ってないわよ?」
愛華はキョトンとした顔。
晴翔「え」
愛華「え?」
しばらくしーーーんとなり。
晴翔はおにぎりを持ったまま立ち上がり。
晴翔「夜風に当たってくる」
とそのまま廊下に歩いて行きました。
坂本「おーい!まだ昼!!」
坂本も追いかけて出ていきました。
全てを知っている由莉は笑いが止まりません。
愛華「…婚約してるのに…付き合うって何かしらね?由莉」
由莉「さあね?」
ふらふら歩く晴翔を追いかける坂本。
晴翔は何やらぶつぶつ呟いています。
晴翔「…まじで女わかんねぇ、付き合う気ない男を押し倒すかよ普通…」
坂本「え?え?!?!そ、そういうことする関係なの???」
誰にも聞かれてないつもりだったのに…!!
晴翔「ち、違う、何もしてない…ちょっと…あの…」
調子乗ってキスしたし(おでこに)、思い出すと耳まで真っ赤になる晴翔。
坂本「は、晴翔おまえからそういう雰囲気だしたんだろ!愛華ちゃんそんなことしねぇよ」
晴翔「あれは…!!!寝ぼけて…!!!」
坂本「言い訳するなよ!!!心配したのにそんなことしてたのか!!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ2人を見て。
廊下にいる生徒は、なんだ。金山くん。すっかり元気じゃん。
と、晴翔にも日常が流れて行きました。
・
愛華「…はる、もう参考書終わったの?」
晴翔「煩悩を消すためには勉強が1番だから」
愛華「…煩悩…?」
由莉「また変な方向に頑張ってるし」
愛華「坂本くん、はるどうしたの?」
坂本「や、な、どうしたんだろねぇ…はははは」
坂本は晴翔の話を聞いてから愛華と目が合わせられなくなったよう。
愛華「変なの」
そして、その勉強の甲斐あってか、難関国公立に合格した晴翔であった。
身から出た錆『完』