特に検査で異常がなかったので、すぐ退院して、次の日は、いつも通りの朝…
のはずなのに。
ぼーっとしながら朝の支度。
晴翔の母「おはよ、元気そうでよかった」
母が準備を済ませて、リビングに入ってきた。
いただきます。と、晴翔が準備した朝食を食べ始めた。
元気なふり、してるだけなんだけどなぁ。
父親も静かに席に着いた。
晴翔の父「熱下がったのか」
晴翔「…うん」
晴翔は何も考えずに、しゃかしゃかお弁当を作り。
みんなはいつも通りの会話をしています。
晴翔は理由もない不安と戦っていました。
なにが、とかじゃなくて…
なんか不安なのが不安…
重い足取りで登校しました。
・
先生「晴翔おかえり〜!」
晴翔「あ…ども…」
いきなり話題の中心に、クラスの視線がバッと自分に集まります。
先生「惜しかったなぁ〜具合悪くなければ優勝だっただろ?」
晴翔「…いや、そんな」
先生「尻餅ついて、おしり痛かったよなぁ?」
先生のジョークにクラスみんなハハハと、パラパラ笑い声が。
普段ならこんないじり、全然大丈夫なのに…ほら、自分も笑って答えなきゃ…
愛華「なんで笑ってるの?」
愛華の一言でクラスが一瞬で静かに。
先生「一川…冗談だって」
愛華「冗談だったら、なんでもいっていいのですか?」
クラスの空気がピシッと冷たくなります。
愛華の凛とした声に耳が痛くなるほど。
愛華「冗談でも、不愉快…」
後ろの席の晴翔がガバッと愛華の口を塞ぎます。
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晴翔「大丈夫です…尻割れなくてよかったです、ハハハ…」
クラスのみんなもつられて笑い、空気を解凍しました。
・
朝のホームルームが終わり
晴翔「あい…俺大丈夫だから、かばわなくていいよ?」
愛華「…あいが嫌だっただけ」
晴翔「じゃあ、我慢して」
愛華「どうして?」
晴翔「…ほっとけばいいんだって」
愛華「嫌な思いしたでしょ?」
流せばいいのに、いちいち気にしている自分も腹たつ。
愛華「そんなこと我慢して仕方ないじゃない…」
晴翔「いいんだって、うるさいな」
温厚な晴翔が大声を…
愛華は驚き目をパチパチ。
晴翔もハッとして、
晴翔「…ごめん…」
愛華「…?」
由莉「ちょっと晴翔。何で愛華を怒鳴るの」
晴翔「
廊下の足音、話し声、黒板に書く音…全部煩わしく感じてイライラする。
正直、退院しても全然よくなっていない。
むしろ…
パシっと誰かに腕を掴まれる。驚いて後ろを向くと、心配そうな顔をした愛華が。
愛華「…一緒に帰りましょ?」
晴翔「…ごめん…ちょっと職員室行くから」
愛華「待ってるわよ?」
晴翔「…いい」
晴翔はスタスタ歩いて行ってしまいました。
愛華「教室で待ってる!」
晴翔の背中に声をかけます。
由莉「ほっときなよ」
愛華「晴翔が大きな声出すなんて…」
由莉「試合で負けてイライラしてんじゃない?」
坂本「…なんか、試合の前具合悪かったよね?」
坂本も心配そうに遠くなる晴翔の背中を見つめます。
由莉「…思い詰めてんのかな…何か」
坂本「話だけでも聞いてあげよ」
3人で教室で晴翔を待つことにしました。
・
愛華「…遅いわね…」
由莉「何話し込んでるのかな…」
坂本「しばらく休んでたもんね」
教室のドアがガラガラと開きました。
晴翔?かと思いましたが担任の先生でした。
担任「お前らー早く帰れよー」
坂本「先生。職員室行きました?」
担任「おう、さっきまでいたけど」
坂本「晴翔いました?」
担任「…いなかったぞ?」
由莉「え」
坂本「帰ったのかな…」
愛華はすかさず電話をかけます。
愛華「電話出ない…」
愛華は教室を飛び出しました。
由莉と坂本も愛華の後を追いかけます。
由莉「帰ったんじゃないの?」
愛華「ううん」
首を振り、涙目になりながら晴翔を探します。
由莉「ほんと、どんだけ大切なのよ…」6
ぼそっとつぶやく由莉。
あまり人が通らない廊下も見に行きました。
坂本「…あれ、なんか…」
遠くの方に物影が。何か大きなものが落ちてる?いや。
由莉「え?人?」
坂本「誰か倒れてる?」
パタパタと走って近寄ると。あの髪色は…
愛華「はる!!!」
荒い苦しそうな呼吸、小さくうずくまって、涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。
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愛華「はる!はる!」
愛華が揺すると、ふっと晴翔の力が抜け、目を閉じました。
続く