一緒がいい
鍵を坂本に渡してふらふら歩く晴翔。
疲れなのか、廊下を歩いている間も頭がぐらぐら。
愛華が待っている図書室に向かいます。
一緒に帰りたいからと、部活が終わるまで待っていてくれます。
愛華にも、言わなきゃ。大学のこと。
まあ、愛華のことだから、あっさり受け入れるだろう。
…愛華も…逃げたって思うかな
急に息が詰まる。
鼓動が早まって、呼吸のタイミングが掴めない。
なんだ。これ。
落ち着かせなきゃ、
図書室の扉の横に手をついて、
呼吸を整えようとします。
心臓の音が体全体に響いて、
目が回りそう。
愛華「はる??」
横を見ると、図書室からちょうど愛華が出るところ。
大丈夫
愛華に伝えようとしましたが、
呼吸が整わない、
はあ…はあ…
愛華は目をパチパチして、晴翔に近付きます。
愛華「…どしたの?」
晴翔の背中をさする愛華。
愛華「大丈夫?」
晴翔「大丈夫、大丈夫」
愛華「…でも」
晴翔「…走ってきて…壁ドンの練習」
愛華「…つまらない冗談はやめましょ」
晴翔「……」
愛華は背中をさするのをやめて歩き始めました。
晴翔「あい…」
その背中に声をかけます。
声が少し震えます。
晴翔「…あの…俺、別の大学行くことにした」
愛華「…え?」
目をパチパチさせる愛華、そして悲しそうな顔で俯きました。
愛華「…そうなの…」
晴翔「…ごめんね」
愛華「一緒がいい…」
晴翔「……ごめんね」
愛華のしょんぼりした顔に、
晴翔と、そんなに一緒の大学行きたかったのか、と
自分の選択が悔やまれます。
愛華「お家、大変なの?」
晴翔「え?」
愛華「おじいさまと、おばあさま…ご両親お仕事してるし、裕翔は次高校…色々してるのでしょう?はる」
晴翔「まあ、ね」
愛華「それで部活続けられないから、六花大学やめたの?」
晴翔はギクっとします。
まさにそれである。
…話したっけ?いや、話してない。
そう、今回の試合で六花の推薦きて、部活続けられたら、愛華と一緒の六花大学にふつうに通える、その予定だっけど…家族の世話で、部活、やってる時間ないから…
愛華に嘘つけないな。
晴翔「…まあ…それもなくないけど…大丈夫、俺は大丈夫だよ」
愛華「…無理、しちゃダメよ?」
晴翔「大丈夫、してないよ」
晴翔の大丈夫は大丈夫じゃないのだ。
この時から本当に晴翔の大丈夫を信じられない。
今日だって、
暗くてよく見えないけど、顔色も悪いし、悲しい目をしてる。
話、聞いてあげればよかった。
聞きたかった
この時に
そしたら、何か、変わってたかな。
続く