晴翔「やべ!!」

なんと目を覚ますと22時。

愛華の家で眠ってしまったようだ。

愛華がお腹の上で寝息を立てていた。

晴翔「あい?起きて起きて!」

愛華「…?」

晴翔「俺帰るね?」

愛華「あら…真っ暗」

晴翔「今日もありがとう」

愛華「また明日ね」

ずっとこっちにいてもいいのに…

愛華はもう一度ソファに横になりました。

家に帰ると両親も帰宅していました。

晴翔の母「ちょっと、どこ行ってたの」

晴翔「…ごめんなさい」

晴翔の母「…何?その紙袋」

晴翔が手に持っていた薬の袋を後ろに隠しました。

晴翔の母「今日学校から電話あったのよ、ずっと学校来てないって、今日も行かなかったの?」

晴翔「……」

晴翔の母「いつまで学校行かないつもりなの?
     嫌なことでもあったの?
     もう、みんな受験モードなのに…

     勉強遅れるわよ?」

晴翔「…行こうとしてる…」

晴翔の母「じゃあどうして?普通のことでしょ?このままだったらどうなるかぐらいわかるでしょ?」

晴翔はぎゅっと袋を握ります。冷や汗が出て言葉が出てこない。

晴翔の母「何か言いなさい?」

晴翔の父「母さん、言い過ぎだ」

晴翔の母「私は晴翔のこと思って…」

晴翔は黙って、走って部屋に駆け込みました。

晴翔の母「晴翔!!待ちなさい!」

やっぱり、のんびりしている場合じゃないのかな、

参考書を掴み、開いてみても、何が書いてあるかわからない。

どうしよう…どうしよう…

朝、今日は学校、行くのかな?と、ベランダから晴翔の部屋に行くと。

愛華「…どうしたの?」

机で突っ伏している晴翔、顔を上げると、昨日の柔らかい表情が消えていました。

前髪が目にかかり、光が消えた瞳。

参考書を握りつぶしていました。

晴翔「学校行っても…授業…受けれるかな…」

愛華「はるなら大丈夫よ?」

晴翔「…最近さ…文字も…読めない」

愛華「…文字?」

晴翔「参考書、全然、頭に入ってこなくて…」

愛華「…今は…勉強休みましょう?まず、学校に行くだけでも…」

晴翔「それは無理…」

愛華「どうして?」

晴翔「…どんどん…だめになってく気がして…でも、できなくて、何のために…やってきたかわかんなくて…」

きっと不安が襲って、本人も、全部のことにネガティブになっている。

晴翔「…学校、行きたいのに…また、倒れたらどうしようって…不安で…」

苦しそうに頭を抱える晴翔。

晴翔「…なんでこんなに…何もできないの…?俺…壊れたままのかな…」

愛華「壊れてない、壊れてないわ。ゆっくりでも、はるが、出来ることだけ、好きなことだけしてれば…」

晴翔「俺が嫌なんだって!」

晴翔は震えながら叫びのように訴えてます。

晴翔「俺が…嫌なんだよ…こんなんで……あいが…こんなに心配してくれるのに…怒鳴ったり…そのくせ、もう、まともに生活できない………」

今まで、頑張ってきたことも理由も、見失って、今まで積み上げてきた自信も無くしてしまって、自分を責めて苦しんでいる晴翔を見ているのが辛い。

何もしてあげられないのが辛い。

頑張れなくてもいい。人の視線や意見が怖くて、大人数がだめなら、2人で生きていこう。
せめて、笑って生きてて。

それは、晴翔のプライドが許さないんだな…

愛華「今日は、学校、行けなかったけど、また次行けそうな日、頑張りましょ?
何回でも立ち止まって、ちょっとずつ、一緒に、前向きましょ?ね?」

晴翔の背中を苦しさが剥がれるように、強く摩ります。

晴翔の呼吸が落ち着いてきました。

晴翔「…あいの声、聞くと、落ち着いてくる…」

愛華「不安になっちゃったのよね…」

晴翔「…うん…」

愛華「美味しいもの食べて、忘れましょ!」

晴翔「…食べたくない…」

愛華「やー!食べるの!一緒に!」

晴翔「…もうちょっとしたらでいい…?」

愛華「今日もおうち来てね」

 

間違ってが晴翔の部屋のドアから出てきてしまいました。

晴翔の母「…あら?愛華ちゃん?」

そこには晴翔の母が、愛華はビクッとします。

愛華「…こんにちは…」

晴翔の母「…どこから…」

愛華「お勉強…してて」

晴翔の母「ああ…」

晴翔の母は深く聞いてこなかった。

晴翔の母「愛華ちゃん、ごめんね、晴翔が迷惑かけて」

愛華「迷惑じゃないです」

晴翔の母「晴翔、全然話してくれないし、愛華ちゃんに気許してるみたいで」

愛華「晴翔が、話しやすいようになる努力してから言ってください」

晴翔の母の表情が固まります。

ついつい喧嘩腰になってしまう。

晴翔の母「聞かなくても、なんと無くわかるわよ、親子だし」

愛華「わかっているのなら、なおさら向き合わないの恐ろしですね」

晴翔の母「…可哀想って甘やかすこと?親にはね、育てる責任があるの、立派に育てるのが親の役目」

愛華「晴翔の辛そうな顔見ても、無理させるのですか?」

晴翔の母「社会に出た時のために、厳しくしないといけないこともあるのよ?お嬢様の愛華ちゃんには、わからないかもしれないけど」

愛華「晴翔は厳しいこと十分経験してるじゃないですか?
家でまで、そんなこと言われるの酷です」

晴翔の母親はため息をついて。

晴翔の母「愛華ちゃんは、親になったことないからわからないわね。」

愛華「そうですね、なったことないどころか、親とほとんど関わってないので」

晴翔の母はまずいこと言ってしまった。と思った。

もうしばらく、愛華の両親を見かけていない。

愛華「親には…迷惑も、心配もさせたくないんです、育ててもらってる以上、期待に応えたいし。晴翔は特に。
本当は、一番、自分のことわかってほしいの、…晴翔、昔は泣き虫で甘えんぼうだったのに…」

今では、ほとんどその様子なんて見せない。

愛華は向き直り、真っ直ぐな瞳で晴翔の母を見つめます。

愛華「晴翔の心に入れないのなら、黙って、見守っててあげてください。
晴翔はもう、幼い子供じゃないです。」

愛華はスタスタと階段を降りて行きました。

晴翔の母「…はっきりものを言う子だったのね…」

たしかに、怖くて逃げていたかもしれない。晴翔はしっかり者、我慢強い子、だから、すぐ元に…元に?

晴翔の元は…甘えん坊で泣き虫な男の子。

『しっかり者の晴翔』という虚像ばかり見ていたし、晴翔も、見せてくれていたんだ。

現実ばかり突きつけて、希望すらみれなくしてしまったかな…

愛華はただ、真っ直ぐに晴翔を見つめているのに。

もう、晴翔の心に響くのはあの真っ直ぐな瞳だけだろう。

続く

 

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