久しぶりに制服に袖を通した。
引退したら家事をやる、と、約束したので、朝ご飯とお弁当の加えて、全部やらなきゃいけないのに…
ずっと作って無くて申し訳なかった。
家のこと…大丈夫だったかな
裕翔「…にいちゃん…!!」
晴翔「おはよ」
裕翔は目をパチパチして晴翔を見つめます。
久しぶりに会うと照れくさかった。
何か話したげにちろちろ晴翔を見るので、
晴翔は頭をわしゃわしゃします。
晴翔「…裕翔、ごめんな」
裕翔「…ううん」
2人でリビングに行くと、
母の父も、少し驚いた、安心したような顔をした。
部屋にこもってたこと…聞かないのかな…触れたくないのかな。
ご飯は母親が作ったのかな。仕事で忙しいのに…申し訳ない。
ご飯食べる?と聞かれましたが、食べれなさそうなので断り、水だけ飲みました。
晴翔母「よかった、元気になって、倒れたって聞いたから、なんかの病気だったらどうしようって心配したのよ?」
晴翔「…うん」
晴翔父「退院して、いきなりだから、疲れたんだろ。ま、なんともなくてよかった」
晴翔「…そうだね」
なんともない?なんともない、ただ、疲れてただけ。
そう思いたいけど…
ほっといてもよくならなかった。ましにはなったけど。
裕翔「……燃え尽き症候群じゃね?」
晴翔母「それなら尚更切り替えなきゃだね!やりたいこと見つけよ!」
晴翔「…うん」
やりたいこと…?考えたことなかった。
この期間、愛華と、体を起こして、人と話せるように頑張ってきた。
まだ普通のステージには立ててないんだ、と思い知らされた。
両親と裕翔は先に出かけました。
晴翔「…ーっ」
晴翔も外に出て息を吸いました。
先生にまたなんか言われるかな、
みんなの視線、痛いかな
学校行かなきゃ、行かなきゃ…行かなきゃ……
考えるほど目が回ってきて…
息が詰まって、吐けない、吸えない、苦しい、
苦しくて、勝手に涙がボロボロ流れてくる
呼吸が荒くなって、
脚に力が入らなくなる…
あ、やばいかも…
愛華「はる!!」
力が抜けると同時に愛華が抱きとめて、晴翔のあたまが愛華の肩に収まりました。
愛華「大丈夫、大丈夫…」
愛華はただ、優しく体をさすって、包み込んでくれた。
苦しくて、息ができなくて、怖い
涙でぼやける視界、手足の感覚もなくなってきた…
でも、愛華があたたかくて
前よりも、早く、治ってきた。
愛華「大丈夫よ、大丈夫」
晴翔「…あい…ごめん…」
愛華「謝らなくていいの、はるは悪くない」
晴翔「…っ…っ」
愛華「もう少し、日向ぼっこしよ」
立てるまで、ずっと、身体を預けさせてくれた。あんなに細い身体で。
晴翔「…立てそう」
愛華「そ?ゆっくり、つかまって」
晴翔は愛華のに支えられて、なんとか立てました。
愛華「うちおいで」
晴翔「…え、学校は?」
愛華「…行きたいの?」
晴翔「…いや…」
愛華「あいは今日行きたくないから、はるも付き合って」
愛華は晴翔を引っ張り、家に連れ込みました。
・
学校にいる由莉は愛華からメッセージを受け取りました
由莉「…さぼる…晴翔、大丈夫かな…」
先生「席つけー」
由莉「せんせー、愛華と晴翔休みでーす」
先生「あ?まだ風邪治らないのか」
由莉「せんせー、風邪でも人はころっといくよ〜体も心もねー」
先生「うるさいぞ、二見」
由莉「だって〜しかも、心の傷って一生残りません?先生も、振られたこと未だに思い出してショック受けるでしょ?」
先生「なんで振られたことになってんだ!」
由莉「いえーい!ビンゴー」
愛華、晴翔を頼んだわよ。
・
愛華の家は昔はずっとお手伝いさんがいた。
今は、数時間きて家事をしてくれるそう。
今日は愛華1人らしい。
ぐー…愛華のお腹が鳴りました。
晴翔「朝、食べてないの?」
愛華「食べたわよ?」
晴翔「…なんか作る?」
愛華の家にあるもので、軽く何か…
愛華「…作れる?」
晴翔「…いけそう」
卵とチーズ…オムレツとか作れるな。
あ。手動くじゃん。
普通に料理できたことに驚きました。
なのに、なんで学校行けないのかな…
愛華は嬉しそうにもぐもぐ晴翔が作ったオムレツを食べています。
晴翔「おいし?」
愛華「1番美味しい」
晴翔「大げさ」
愛華「はるは食べないの?」
晴翔「…んー」
食欲が、あるような、ないような、
お腹すいてるけど、食べて、飲み込める自信がない…
愛華はオムレツをすくい、晴翔の口元に近づけ。
愛華「あーん」
晴翔「え?」
愛華「ひと口、ね?」
晴翔は口を開けて、あーんしてもらいました。
あ、食べれるかも
愛華「おいしーね」
晴翔「…ん、食べれる」
愛華「そう?じゃあもう一回」
晴翔「自分の作るよ」
愛華「むー」
ちょっと不満げな愛華。
自分の椅子に戻りまた、嬉しそうにオムレツを頬張っています。
晴翔「午後からでも、学校、行ったほうがいいかな」
愛華「行きたいの?」
晴翔「…いや…でも、行かなきゃ」
愛華「どうして?」
晴翔「…学校だから?しばらく行ってないし」
愛華「別に行かなくてもいいのよ、行きたくなければ」
オムレツをぺろっと平らげ、デザートとってくると、冷蔵庫をごそごそ
晴翔「あいに付き合わせるのも悪いし」
愛華「あい、今日は学校行きたくないわ」
愛華は冷蔵庫からひょこっと顔を出し
愛華「今日は病院行くんでしょ?」
晴翔「うん」
愛華「一個ずつでいいじゃない」
愛華は焦らないの、と、アイスクリームをぱくぱく食べました。
・
愛華は付いてきてくれると言ったが、なんとなく恥ずかしくて1人で行った。
精神科の病院は、思ったより明るくて、少し緊張がほぐれた。
医者と話をするのも緊張するな…
いくつかの問診票と質問を埋めながら考えていました。
医者「薬に抵抗があるようでしたら出しませんし、持っておきたいようでしたら出しますし。」
晴翔「…そうなんですね…一応…とかでも大丈夫ですか」
医者「もちろん、お守りとしてでも、持っといてください」
晴翔「ありがとうございます…」
医者「合う合わないありますから」
色々な人の事例や薬の説明を淡々と丁寧にする先生。
医者「…悩み、話せる人いますか?」
晴翔「え?」
医者「患者さん、真面目な方が多いんです。
頼るのが下手だったり、責任感が強かったり。
我慢してしまうんでしょうね」
晴翔「…はい」
医者「あなたのできることを見つめて、生きていけばいいんです。」
晴翔「はい」
医者「見つめられなくなったら、私たちのような赤の他人を頼るのもいと思います」
一緒に頑張りましょうね。
笑顔こそなかったが、芯の温かさを感じた。
愛華「おかえり!」
晴翔「ただいま」
愛華の家に一度戻った。愛華はよく頑張ったねと晴翔の頭と撫でた。
病院行っただけだけど…
たしかに、疲れたし、普通に帰ってこれたことに安堵した。
薬の入っているふくろを机に置いた。
安心材料がある。
小さい一歩だけど、進んだかな。
明日は学校行けるかな…
続く