愛華「…なんでいるの」

 

愛斗「仕事~」

 

愛華「なんで由莉と一緒にいるのって聞いてるの」

 

愛斗「僕が一緒にいたいから」

 

愛華「…帰りましょ、由莉に迷惑かけないで」

 

愛斗「いやっ。僕由莉ちゃんと一緒にいたい」

 

拗ねると口を尖らせるもの愛華そっくり

 

愛華「由莉にこれ以上迷惑かけないで」

 

愛斗「や~だあ~」

 

由莉「迷惑…じゃないよ、全然、それに、愛斗くん帰って来てること、家の人も知らないんでしょ?落ち着くまで、うちにいていいし…」

 

愛華「なんで2人は普通でいれるの」

 

由莉の言葉を声を震わせながら遮りました。

 

愛斗「…もう由莉ちゃんも大人だもん…ね?慣れてるでしょ?」

 

愛華「…愛斗と一緒にしないで」

 

由莉「…あのね、愛華。あの時も…」

 

愛華「…知らないっ」

 

愛華は愛斗から由莉を取り返し、愛斗を置いて歩いて行きました。

 

愛斗「…合鍵持ってるんだけどね」

由莉「愛華待って」

 

愛華「一緒にいたらまた同じ目に合うでしょ」

 

由莉「え」

 

愛華「…家に隠してるのってもしや愛斗?」

 

由莉「…そう」

 

愛華「…由莉は自分のこと大切にして、傷つくところ…もう見たくない」

 

そんな愛斗と由莉が再会したのは…あの日の夜。

 

由莉との再会

男友達と夜の街を歩いていると、突然腕を掴まれた由莉。その相手は。

 

由莉「…嘘…愛斗くん…?」


愛斗「お迎えにあがりました。お姫様」

 


男友達「…何このふざけた奴」

 

無視して由莉を引き寄せ歩き出そうとしますが、男友達の手を解き、


由莉「ごめん、この人連れて帰るわ、また」


由莉は愛斗の手を握り返し去って行きました。


男友達「え?俺よりそいつ取るのかよ…」

愛斗「由莉ちゃん相変わらず綺麗だね〜…」


呑気にペラペラ喋っている愛斗を無視して、


由莉「いつから日本に?」


愛斗「さっきだよ?仕事でね」

 

と、ポスターを指差す愛斗。あのFUYUのミュージカルのバレエの指導をするそう。


由莉「さ、さっきって荷物もなしに…」


愛斗「荷物ねー今度届くみたい」

 

由莉「…どこに」

 

愛斗「…いえ?」


由莉「…あのねぇ、家帰れるの?」


愛斗「んー…ちょっとね…」


口を尖らせてふらふらしている愛斗、由莉は少し考えて


由莉「…とりあえずうち来る?」


愛斗「ほんと?」

 

ぱあっと明るくなる顔、この顔に弱いんだよなあ、由莉は少し俯いて、


由莉「…愛斗くんが実家帰りにくいの、わたしのせいだし」


愛斗はふっと笑い。


愛斗「いや?誘ったのは僕」


由莉「いや違うでしょ、私が…」


由莉の頭を優しく撫で、


愛斗「お邪魔するからには、僕が由莉ちゃんの癒しになるからね」


ふーっとため息をつき、


由莉「何もしなくていいから」

 

 

由莉の家で2人。


愛斗「一人暮らしなんだ」


由莉「ママが再婚して、一人暮らしの方が気が楽でしょ?お互い」


愛斗「そうなんだね、えらいね」


由莉の頭を優しく撫でる愛斗。


壁には愛華や友達の写真がコルクボードにたくさん飾ってあります。


愛斗「愛華は元気?」


由莉「もっと写真見る?」


ケータイにある愛華の写真を見せます。


愛斗「清楚なお姉さんになってる」


由莉「私の好みの女にプロデュースしてるから」


愛斗「仲良しなんだ」


由莉「週一でデートしてる」


2人で肩を寄せ、愛華の写真を見ます。愛華と晴翔と由莉が映った写真が、愛斗が画面を見たまま


愛斗「…まだ好き?」


由莉が、写真をスクロールする手を止めて、口をつぐみ、絞り出すような声で、


由莉「…ずっと好き」


愛斗「辛くない?」


由莉「…もう、慣れたかな、それに私、好きで一緒にいるから」


愛斗「そっか、大人になったね」


由莉「2人うまくいってるし、ねぇ、聞いてめっちゃ相談されるんだよ?」


愛斗「それはそれは複雑な」


由莉「いいよねぇ…羨ましいわ」


不意に愛斗は由莉の髪を撫で、髪にキスをします。


愛斗「由莉ちゃんも、すっごく綺麗」


由莉「…これも海外のご挨拶?」


愛斗「まさか、僕は本当に美しいと思ったものにしか触れないよ」


由莉「本当にぃ?あんな簡単にファーストキスも奪っといて…」


愛斗「…ファーストキス?」


由莉は、やば、余計なこと言ったと、目を逸らしました。愛斗は猫のように由莉に擦り寄り、

 

愛斗「キスも初めてだったんだ」

 

艶っぽく揺れる瞳に吸い込まれそう…あの日みたいに。

 

愛斗「…そっか…由莉ちゃんの奪えて嬉しい」


甘い顔でにやりと笑う愛斗。


由莉「…みんなに言ってるんでしょ」


愛斗「はは、でも、ほんとに嬉しいよ?」


しーん…静かになる部屋


愛斗「…あの、男の子は?彼氏?」


由莉「お友達、ただの遊び」


愛斗「へー…そんなことどこで覚えたの」

 

由莉「…それは愛斗くんが教えたんでしょ…」

 

愛斗「僕と一緒にしちゃダメだよ。由莉ちゃんは一途なんだから」


由莉「でも、遊んでて…気持ち、紛れるかなって思うけど、叶うわけないし、叶わせる気もないし」


天井を仰ぎ、ポツポツと話を続ける由莉。


由莉「そう…でも、ずっと、してるけど…やっぱだめなんだよね…消えないし、薄れもしない。」

 

愛斗「由莉ちゃんの気持ち、ダメなんかじゃない。友情も、恋も、両方とも素敵なことだよ?」

 


由莉の頬をなでながら優しい目で見つめる愛斗。


愛斗「でも、あんな男、代わりになる?」

 

由莉「…あー…」

 

ならない。誰も、でも、愛斗も代わりにはならないけど…温かかった…と思い出していると、それを察して、愛斗がにやり。

 

愛斗「僕がいいでしょ?」


愛斗に包まれる由莉。人に甘えたくない、ましてや、愛華の兄になんて。なのに、この安心感は誰にもない、愛斗にしか。これだから、愛斗は欲しがられるんだろう。名前も顔も知らない、大勢の誰かに。

 
一度体を離し、向き合う二人。愛斗が両手を広げ


愛斗「…おいで?」


由莉「…ずるい」


由莉は愛斗に倒れ込みました。

ピンポン。

次の日、チャイムで目が覚めました。

 

気づいたら愛斗の腕の中に。天使のような顔がすぐ近くに、

 

由莉「…意外に筋肉あるんだ」

 

腰が重く起きる気にならないので無視しようとしましたが。

 

ピンポン、ピンポン、ピンポ、ピンポン

 

さすがに近所迷惑になると思いインターホンにでました。

 
由莉「はーい」


晴翔『由莉〜大丈夫か?』


由莉「なにが?」


晴翔『いるなら開けろ〜』

 

愛斗がいることはなるべくばれたくない…

 

由莉「えー…すっぴん見たれたくない」

 

今更何言ってんだとか言われそう…中学の時ほぼすっぴんだったし。

 

晴翔『今更何言ってんだ』


由莉「…はいはい」

 
昨日のせいでちょっと喉が疲れている。


ガチャ、家のドアを開けました。

 

晴翔が首元を見て目線を逸らしました。


由莉「どうした?晴翔一人で」


晴翔「いや、愛華が、お前が学校休んで心配だーって…電話きたから」


由莉「あー、来たのがあんたでよかったよ」


晴翔「は?」


由莉「わたしは元気だから大丈夫って言っといて」


晴翔は下に目をやります。男物の靴が隠されてます。


晴翔「…誰かいるだろ」


由莉「…昨日会った男よ」


晴翔「…中入れろ」


由莉「だから、別に普通の男友達…」


晴翔「普通の男友達なら俺会っても大丈夫だよな?」


と、由莉を押し退け部屋に入る晴翔。


由莉「ちょ、晴翔!!」


すると、部屋には…


愛斗「もー、ノックぐらいしてっ」


晴翔「わぁ!!!」


そこには着替え途中の…


晴翔「あい…じゃない。」


愛華にそっくりな…男性。


晴翔「え、なんで?愛斗くん…??」


由莉はため息をつき、愛斗はにこにこ晴翔に寄って来て。


愛斗「おっきくなったねぇ晴翔くん…って本当におっきいねなんせんち?」


愛斗も180㎝あるのに、晴翔は186㎝もあるため少し見上げる感じに。


晴翔「…なんで?ここに??」


由莉「街であって…」


晴翔「昨日の?」


愛斗「そうそう持ち帰ってもらった」


晴翔「…え?」

 

由莉「変な言い方しないで」

 

愛斗「ほんとのことでしょ~?」

 

晴翔「…いや、お前みたらなんとなくわかる」

 

晴翔は由莉の首元を見ます。由莉は急いで鏡を見ると

 

由莉「え、ちょっと何してんの!」

 

愛斗「これで僕のもの」

 


由莉の頭に顎を乗せる愛斗。晴翔まで恥ずかしくなり、その場しのぎで

 

晴翔「…とりあえず愛華に連絡するから」

 

由莉「あ、ちょっと」

 

晴翔「ん?」

 

由莉「愛斗くんいることは内緒で…」

 

晴翔「…なんで」

 

由莉「…色々あんのよ」

 

晴翔「わかった」

 

愛華に電話をかけ、晴翔が由莉の無事を伝えます。途中由莉と代わると、愛斗が由莉にちょっかいを出し、

 

愛斗「ちゅっ」

 

 

由莉「きゃっ!」

 

晴翔「ななにしてんの!!」

 

愛斗「しーーー」

 

自分をいないことにさせてるのが気に食わなかったのか、どこまでも自由な愛斗。

 

電話の奥で愛華が心配をしています。

 

由莉「ね、猫預かってて…」

 

愛斗「へ〜僕猫か」

 

晴翔「静かにして!」

 

電話が終わり、

 

晴翔「そういえば、六花にピンク髪のやつ来てない?」

 

由莉「…来てないよ?」

 

晴翔「まあ、冗談だろうけど、なんか俺に好意ある的なこと言ってきて、愛華に嫌がらせしてないか心配で…俺も縁切ったけど」

 

由莉「そんなする必要ある?ほっとっけば?」

 

晴翔「付き合ってる奴の近くに、好意寄せてる人間いるの嫌じゃない?」 

 

由莉「愛華は気にいないと思うけど」

 

晴翔「俺はやなの」

 

そうだとしたら、晴翔、甘いぞ、と思う由莉。

 

晴翔が由莉の家を後にしました。

 

愛斗「僕もお仕事~」

 

由莉「待って?どこいくの?」

 

愛斗「スタジオ?」

 

由莉「…心配だから一緒に行く」

 

由莉は急いで首元が隠れる服を着て愛斗を送りに家を飛び出しました。

 

FUYUこと夏樹がバレエのレッスンに励んでいます。愛斗はその様子をニコニコしながら見ています。

 

愛斗「FUYUくん」

 

夏樹「はい?」

 

愛斗「とっても良くなってる、がんばったね」

 

夏樹の頭を優しく撫でる愛斗。

 

愛斗「…でも、一個だけ聞いていい?」

 

夏樹「はい」

 

愛斗「…相手役の女の子に魅力感じてないでしょ、全く」

 

夏樹「え、」

 

ギョッと驚きます

 

愛斗「今までの作品を見させてもらったけど全部」

 

夏樹「…まだまだなんですかね、演技」

 

愛斗「今回、ミュージカルだから、お客様に同じ空間で感じられちゃうからね…」

 

夏樹「でも…」

 

愛斗は夏樹にグッと近づき、

 

愛斗「困ったらいつでも協力するからね」

 

艶やかな瞳に思わずドキッとする夏樹、その顔を見てクスッと笑う愛斗。

 

愛斗「その目だよ」

 

その場を離れ帰りの準備をしに行きました。

 

夏樹「…危険な香りする人だな…」

 

 

次の日、また愛斗の迎えに行こうと急いでいるとさゆりに話しかけられて、晴翔のこと好きなんじゃないかと疑われた話を、レッスンを終えた愛斗に話しました。

 

愛斗「傑作だね」

 

由莉「なんで私があんなドM男を好きになんなきゃなんないの」

 

愛斗「由莉ちゃんが好きなのはこの顔だもんね~」

 

由莉「…言わないで」

 

愛斗「ふふ、かわい」

 

そのまま由莉の頬に手を添え、キスしました。

続く

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