悩みも飲み込んで
晴翔「…なんで海」
愛華に連れてこられた海。
夕日に照らされて、確かに、綺麗たけど。
愛華「懐かしいね~」
晴翔「小学生以来だっけ…ここ…来るの」
小学生の頃、空手の試合で負けが続いて、うじうじしてた時、連れてきてくれたっけ。
愛華と晴翔、初めて2人で出かけたのがその時だったかも。
晴翔「初めて来た時も、夕日綺麗だったね」
愛華「すごく怒られたわよね」
晴翔「たしかに小学生にしては遠出だよなあ」
思い出話をしながら、どちらともなく手を繋いで浜辺を歩きます。
晴翔はまだ手を繋ぐだけでも心臓がバックバク。
愛華「ねえねえ、はる」
晴翔「なあに?あい」
愛華「塀の上座りましょ」
あいかが指を指す方にはコンクリートの塀が続いています。
小学生の頃、塀に登って上に座りたかったのですが、
2人の当時の身長では届かず。
晴翔が肩車して愛華だけ、登って高い位置から海を見れたそう。
愛華はその時の景色を晴翔にも見せたい、と思って塀に近づくと
愛華「あら」
晴翔「あー、今見るとそんなに高くないね」
塀はちょうど晴翔の方より少し低いぐらい。
愛華「はるおっきくなったのね」
愛華にとってはまだ高い塀。
晴翔「上登る?」
愛華「うん」
晴翔はひょいっと愛華を抱き上げ、塀の上にちょこんと座らせました。
晴翔は塀によりかかります。
塀の上に座り、目線が同じに
愛華「あいの方がおっきくなった」
晴翔「いや、同じだろ」
愛華「むー」
ほっぺを膨らませ、ぷいっと海を見つめる愛華。
夕日に照らされ、映える真っ白な肌。
潮風になびく前髪から覗く瞳は海の流れを飲み込んでしまそう。
晴翔「…綺麗」
晴翔は、愛華の肩を抱き寄せ、吸い込まれるように唇を重ねていました。
涼しい風に冷えてきた頬、重なった唇だけが熱を帯びます。
愛華も応えるように、そっと目を閉じました。
晴翔は一度、息をついて
晴翔「…愛華…好きだよ」
熱を帯びた目で愛華を見つめる晴翔。
晴翔の頬を撫でながら、潤んだ目が柔らかく笑みを浮かべ、
愛華「…1番、愛してるわよ、晴翔」
塀の上に2人の影が伸び、そっと重なりました。
もう、何があっても、愛華だけは離さない。
肩を抱き寄せた手に力がこもる晴翔。
愛華「…っ、はる、痛い」
晴翔「ご、ごめん…」
愛華「…ここ来たから、もう大丈夫ね」
晴翔「何が?」
愛華「小学生の頃来た時も、次の試合から負けなしでしょ?」
晴翔「あ…」
愛華の不思議な行動には、意味がある。
わがままのふりして、
晴翔「…俺が最近、くよくよしてたから?」
愛華「眉間のしわ、癖ついたら老けるわよ」
晴翔「うわ、まじか、困るな」
愛華「私も困るから、しわもう寄せないでね」
晴翔「あい、ありがとう…」
愛華「海、行きたかっただけよ、連れてきてくれてありがとう」
愛華には、敵わないな。表面だけ優しくできる人なんていくらでもいたけど、愛華みたいな考えを持って行動できる人、出会ったことない。
そんな愛華に、自分は何かできているかな。
愛華「ねえ、はる、お願いあるんだけど」
晴翔「うん、なんでもやるよ」
愛華「誕生日会、今年、招待していいかしら?」
晴翔「…え?」
愛華は超がつくほどの嬢様なので、毎年誕生日には盛大なパーティーが開かれます。
会社のお偉いさんやどっかの御曹司ばかり来るので、晴翔もつまらないだろうと、友達はいつも招待していませんでした。
愛華「20歳だから、お友達も呼びたいし、はるも、予定空いてたらきてほしいの。」
晴翔「ありがとう、もちろん行く」
愛華「プレゼントははるの焼いたケーキね」
晴翔「毎年それじゃん、ほかにないの?欲しいもの」
愛華はじーーーーっと晴翔を見つめます。
晴翔「何?」
愛華「なにかしらね?」
晴翔「…教えてくれないの?」
愛華「秘密」
晴翔「え〜…」
また、自然に手を繋ぎ…いや、自然じゃないですね、晴翔はさっきキスもしたのに未だに心臓バクバク。
20歳の誕生日、特別なことをしたい…と考えますが、その前に。
晴翔「…着る服なくね?」
ザザーンと砂浜に波が打ち付け
晴翔の心には現実的な問題が打ち付けました。
続く