恋が遠い
愛斗との初めて会ったのは由莉がが中学2年の頃。
愛華の家に初めて行く時、由莉は緊張していました。
晴翔「なんか緊張してね?」
由莉「え?」
晴翔「…顔見たら。そんな気がして」
由莉「あ、いや、私格好派手だし…」
晴翔「あーそれなら大丈夫、そんなこと気にする人たちじゃないから」
由莉「そ、そう」
愛華の家に遊びに行くと、晴翔の言った通り陽気な両親が出迎えてくれました。
愛華ママ「綺麗なgold!beautiful!」
愛華「ママイギリス人なの」
由莉「なるほどね」
愛華ママ「ゆっくりしてね!」
優しく向かい入れられホッとしました。
愛華の部屋でしばらく遊んでいると。愛華が、お菓子を持ってくるから待っててと言ったきりなかなか戻ってこなくなり、心配になった由莉が探しに行くも、愛華の家は豪邸で、部屋がありすぎて迷子に。
由莉「あれ…ここ…だっけ?」
ガチャ、と開けたところに、真っ白な肌に大きい目、ブロンドの髪の…
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由莉「…愛華?じゃない」
愛斗「…愛華の…お友達かな?」
愛斗は微笑み由莉の手を取り。
愛斗「はじめまして。愛斗です、よろしくね」
愛斗はフワッとした笑顔を向け、由莉の手の甲に軽いキスをしました。
由莉は驚き、咄嗟に手を引っ込めてしまいます。
愛斗「あ、ごめんね?日本の女の子には失礼だったかな?」
愛斗はニコニコしたまま由莉の頭を撫でました。
由莉の頭にはてながぐるぐる。するとドタバタと足音が。
ガチャとドアが開く音。
愛華「愛斗、由莉に何かした?」
由莉「愛華…」
愛斗「愛華〜ご挨拶しただけだよ?」
あ、お兄さんか、それにしても似てるなぁ、とまじまじ顔を見ている由莉。
その視線を感じ、愛斗は由莉に向き合い。
愛斗「改めまして、愛華の兄の愛斗です。由莉ちゃんていうのかな?よろしくね」
愛華「この人には気をつけて由莉。」
愛斗「なんてことを…もう」
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愛華は由莉の手を握りました。由莉はえっ?と愛華を見つめ直します。火をつけられたように手が、全身が熱くなります。愛華はツカツカと部屋へ戻っていきました。
愛華に手を握られうろたえている由莉を見て
愛斗「…ほー」
・
愛華の部屋に戻った2人、愛斗の部屋は隣の部屋だったよう。
愛華「愛斗、海外暮らし長いから距離近いのよ」
由莉「あ、そうなのね」
愛華「それにね、いっつも違う人と遊び歩いてるのよ!手ぐせ悪いから気をつけてね」
由莉「う、うん」
愛華「…なにもされてない?」
由莉はあれはカウントに入れるべきか…と考えましたが
由莉「とくに…」
あんな王子様みたいな人、存在するのか。ぐらいにしか思っていませんでした。
それよりも愛華に握られた手の感覚が、思い出すだけでむずがゆい気持ちにさせました。
・
愛華と一緒に愛斗のバレエを見に行ったり、夜まで愛華の家で遊んだ日は帰り送ってくれたりと、由莉と愛斗も仲良くなりました。
面倒見のいいお兄さんなんだなあ、とちゃらんぽらんに見えるけれど要所要所ではしっかりしている人と信頼していきました。
ある日の帰り道。由莉は買い物するために街へ行きました。
その近くには広めの公園があり、噴水の周りにベンチがあるため、平日でもくつろぐ人の姿が。
ちろっと目をやると、そこには鳩と戯れる愛斗が。
由莉「…何してるの?」
愛斗「あ~由莉ちゃん、ちょっとお散歩してた」
由莉「今日バレエは?」
愛斗「休演日~」
ぽやぽやした声と顔で話しかけられると、少し調子が狂う気がします。
ベンチに座っている周りのカップルも愛斗のキラキラさにちらっと目をやります。
由莉「平日なのにカップル多いね」
愛斗「平和だね~」
由莉「…愛斗君って、彼女いるの?」
海外のすごいバレエ団にいるし、すごく綺麗な人が恋人なんだろうなあ、と勝手に考えていました。
愛斗「んー今いない、たぶん」
由莉「…多分?」
愛斗「なんか、よくわかんないんだよね~気付いたら別の女の子といたり男の子といたりするし」
由莉「ん?ちょっと色々待って?
愛斗の発言に疑問点がが多すぎる。
愛斗「ああ、僕両方いけんだよね」
由莉はきょとんとして愛斗を見つめました。
さらっと、そして、ぽやぽやしてたのに言い方かっこいいな…
愛斗「ま、来るもの拒まず、去るもの追わずって感じ~」
愛斗はんーーと伸びをして
愛斗「由莉ちゃんは?」
由莉「え?」
愛斗「好きな子、いないの?」
由莉はある人の顔が浮かびます
由莉「…いる…かな」
口にした瞬間、ハッとしました。
そっか、私、好きなんだ
この時初めてはっきり自覚しました。
愛斗「へ~、いいね」
愛斗はすっと手を伸ばし、由莉頬を撫でました、
由莉は思わず目線を外しました。
少し寂しそうな顔をしたのは気のせいかな。
・
身代わり
ある日、愛華の家に泊まりをすることになった由莉。
愛華「お友達とね、お泊まりするの初めてなの」
約束した時からずっとウキウキしている愛華。そんな愛華をみて少し複雑な気持ちになる由莉。友達…で、いなきゃと
・
夜になり、愛華と一緒に横になりますが、眠れない由莉。愛華を起こさないように、そっとベランダに出て風にあたりました。
由莉「…なんでハシゴが…ってか晴翔まだ勉強してるのかな」
目の前の晴翔の部屋にまだ明かりがついているのを眺めていると、
愛斗「由莉ちゃん」
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隣の部屋からヒラヒラと手を振る愛斗。夜の暗さも相まって、愛華によりそっくりに見えます。
ぽーっと熱っぽい目で見惚れている由莉。
愛斗「…何考えてるの?」
由莉はハッとして目を逸らしました。愛斗はニコッとして。
愛斗「おいで」
・
言われるがまま愛斗の部屋に入る由莉。愛斗といると、時間の流れが違うような、現実とは違う空間にいるような不思議な気持ちに。
愛斗「…眠れないの?」
由莉「…ん」
そっか…といい、愛斗はベットに腰掛け、手招きします。隣にちょこんと座る由莉。由莉の顔を覗き込み。
愛斗「僕の顔…可愛い顔で見つめられちゃったから…ちょっと気になっちゃった」
由莉は愛華に見えて見惚れてたなんていえないと目を泳がせます。ねえ、と耳元に近づき。
愛斗「…愛華に見えた?」
由莉は目を見開き、ぱっと愛斗の顔を見ます。
由莉「…え…」
愛斗「…あたり?」
由莉「…なんで…」
愛斗「僕こう言うのなんか良く当たるな~」
由莉「…なんとも思わないの?」
愛斗「んー?由莉ちゃんが恋したらあんな可愛い顔するんだってドキドキしちゃった」
由莉「…そうじゃなくて」
愛斗「あ、お泊まりデートじゃましちゃった?僕の部屋呼んじゃって…」
由莉ふるふると首を振り
由莉「…付き合うとか…そう言うのは…考えてないし…嫌だ」
愛斗「…どうして?」
由莉は手をぎゅっと握り、ポツポツと話しました。
由莉「愛華は…私のこと、友達って思ってくれてるのに…裏切るようなことしたくない」
愛斗「…裏切るなんて…そんな、人を好きになれるのは素敵なことだと思うけど」
由莉はさらに声を震わせて、
由莉「…でも、私…どうしたらいいのかわかんない…一緒にいて辛くなるけど…一緒にいれないのはもっと辛く…」
愛斗は由莉を抱きしめ、背中をトン、トンとさすります。そして、一度言葉を詰まらせましたが、耳元で優しく囁きます。
愛斗「…っ…そっくりな僕とキスしたら…少し気がまぎれるんじゃない?」
由莉は目を見開き、
由莉「な、なに言ってるの?」
愛斗「使ってよ、僕のこと、使っていいんだよ」
由莉「…」
愛斗「愛華のこと考えて」
愛斗は由莉の耳を塞ぎます。
ゆっくりと首を傾け、そっと触れるように唇を重ねました。
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そして、ゆっくり顔を離して、もう一度由莉のことを優しく抱きしめます。
人って、こんなに温かいのか。由莉も愛斗に顔を埋め、かすかな、震える声で、
由莉「…もっと…して、先のことも」
愛斗「え?」
一度向き直り、困った顔の愛斗。
愛斗「…それはさすがに好きな人と…」
由莉「好きな人とは…一生できない」
ぽろぽろと泣き出してしまった由莉。もう一度優しいキスが。
愛斗「…僕は由莉ちゃんのこと、好きだよ」
愛斗は壊れそうな宝物を大事に仕舞うように由莉をそっと横にしました。
由莉の瞳にはいつものとはまるで別人のような笑みを浮かべる愛斗が写っていました。
所作の優しさとは裏腹に、瞳には獲物をとらえた猛獣の目のギラつきが光りました。
・
しばらくして、由莉が隣にいないことに気づいた愛華。嫌な予感がし、隣の愛斗の部屋に足を運び。
ガチャ、バーンッ
ドアが勢いよく開く音。愛華は2人をみて、目を見開きます。
由莉「…愛華っ」
愛華はツカツカと部屋に入り、愛斗を引っ張り由莉から引き離します。
愛華「…なにしてるの…」
由莉「愛華…これは」
愛斗「…由莉ちゃん可愛いから、つい」
愛斗の顔つきがガラッと変わり、いつものへらっと笑いで由莉の言葉を遮ります。
愛華「そんな簡単に…由莉に触れないで」
愛斗「簡単じゃないよ?由莉ちゃんは特別」
愛斗がさっと身なりを整え、髪を括りながらいいました。
愛華「誰にでもうまいこと言って…」
愛華は愛斗のことを見たことない形相で睨み
愛華「一生由莉に近づかないで!もう、うちにも近寄らないで!!!」
由莉「まって!愛華、私が…」
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愛斗が振り返りシーっと微笑みかけました。何か言いかけてましたが、愛華につまみ出され、バタン。ドアを閉められてしまいました。
愛華は由莉に駆け寄ります…
愛華「由莉!ごめんね…ごめんね…」
ポロポロと泣き出す愛華を見て、悲しい思いさせるはずじゃなかった…
由莉「…愛華ごめん」
次の日、愛斗はまたすぐに、海外へバレエ留学に行ってしまい。それ以来、帰国もしていなかったのです。
その間、由莉と愛斗の時間は止まったまま。
再会の日までは。
続く