夏樹は今月から朝の情報番組で、部活を頑張る高校生の取材を担当します。
仕事しているので、部活がどんなものか実際に肌で感じるのは初めて。
今日は空手部。今大注目の選手がいるらしい。
調べたら出てくるらしいが、相手を徐々に知っていく生感を大事にしたいとかで、調べないで欲しいと言われている。
校門に降り立つと窓から生徒たちが覗いている。
黄色い歓声が上がる。
それに応えるようにひらひら手を振りながら、
この制服…なんか見覚えあるなぁ
と、考えていた。
格技室に着いて、いよいよ取材開始。
カメラも回り、タレントモードに。
夏樹は息を吐いて、ドアに手をかけます。
夏樹「では、覗いてみましょう…」
ガラガラ、お邪魔します…
女子選手や女子マネージャーがきゃー!と、男子選手もおお!!と喜びの悲鳴をあげます。
夏樹「初めまして、本日取材させていただきます。FUYUで……」
一瞬、夏樹のFUYUの仮面が外れます。
夏樹「……え」
あの時の、男の子じゃん。助けてくれた。
ここの空手部なんだ…偶然。
その男の子が、ぽかんとしている夏樹に近づいてきました。
裕翔「あ、初めまして、金山裕翔です。」
夏樹「え?」
まさかの取材の相手。
動揺している夏樹を不思議そうな目で見る裕翔。
ADさんに小突かれ、我に帰りました。
仕事、仕事…俺は今、
夏樹「よ、ろしくおねがいします」
・
取材のために2人で横並びに座ります。
変に緊張する夏樹。
そうだ、今俺、男の格好だ。女装しているときに会ったんだから、向こうは気づくはずない。
試合近い彼に迷惑かけちゃったな。
夏樹「もうすぐ全国大会ですが、ずばり目標は」
裕翔「もちろん、優勝です」
夏樹「2年生で優勝!」
裕翔「僕、兄がいて、兄が越えれなかった壁を越えたいなって…」
夏樹「お兄さんも空手やってらしたんですか?」
裕翔「そうですね、今はもうやめてしまいましたけど」
終始無表情で話す裕翔。
クールな人なんだ。
でも、女の子(女装した俺だけど)を助ける漢気もあんだなぁ…
今度駅で会えたらお礼したいな。
今のうちに色々聞いておこう。
夏樹「金山選手は好きな子にもらったら嬉しいものなんですか?」
いきなりのプライベートな質問。
裕翔は驚いた声で。
裕翔「え?す、好きな人にですか…??」
顔を赤くして狼狽える裕翔。
あんなに無表情だったのに。
えー、うーんと…と悩む。
可愛い。
無表情で「ないです。」って言われるかと思ってた。
裕翔「え…やー…た、タオルとか?試合でも使えるし…嬉しいかも…ごめんなさいあんま考えたことなくて…」
夏樹「試合でも使ってくれるんですね」
裕翔「え、待って、あ、そうか…うわ、真面目に答えた…」
頭を抱える裕翔。
普段試合では見せないところを見せられた。
ADさんたちが嬉しそう。
ナイスってグッドサインを小さく出された。
しかし、夏樹は目の前の裕翔しか見ていません。
なんだこの愛おしい生物は。
どんなのがいいかな
続く