小さな座長

 

夏樹「…理玖?」

 

理玖「舞台お疲れ」

 

夏樹「ありがとう〜まじでやばい…」

 

夏樹は理玖にもたれかかります。

夏樹は理玖よりも背が低いので、すっぽり収まるサイズです。
夏樹はこう見えて人一倍緊張しぃで、根が真面目だからか、プレッシャーを感じやすい。
しかも、バレエを題材にした舞台なんて初めてだから…。

 

夏樹「時間ある?」

 

理玖「うん、もちろん」

 

夏樹はにっこりして理玖と部屋に向かいました。

部屋に向かう途中、隣の部屋がガチャッと開きました。

 

だいち「おお、理玖くん。」

 

理玖「こんばんは!店来てくれた以来ですね」

 

だいち「またいくね、ゆっくりしてって」

 

理玖「ありがとう」

 

だいちは階段を下って行きました。

夏樹とだいちは兄弟。
理玖は前からだいちのことを知っているので、

 

理玖「…だいちくん、変わったよね」

 

夏樹「あんなヤンキーだったのにな」

 

理玖「180度ちがうね…」

 

夏樹「俺が有名になって、兄がヤンキーだったらやばいって言って、やめてくれた」

 

理玖「優しいね、だいちくん」

 

夏樹の部屋で他愛もない話をして、宿題を一緒にやったり、数少ない学生に戻れる瞬間。

 

夏樹「舞台見にきたよね?彼女と」

 

理玖「まじで、すごいんだよ?」

 

夏樹「なにが?」

 

理玖「葉子さん本当に夏樹のこと好き過ぎてさ〜ポスター何十枚も家にあるんだけど」

 

夏樹「やば、うちにもそんなにないのに」

 

理玖「夏樹、黒鳥役じゃん」

 

夏樹「そうだけど?」

 

理玖「…黒いインコ探してるの最近…」

 

夏樹「ぶっ!!!やばぁ!」

 

葉子のヲタ活が神がかっているため、理玖はついていけないよう。

 

理玖「俺は純粋にね、物語を噛み締めたんだけど」

 

夏樹「おお、」

 

理玖「あの、姫さらう時の、黒い羽バァって出てくるところすごかった」

 

夏樹「感想浅っ」

 

夏樹が鼻で笑います。理玖もにこにこして、

 

理玖「でも、あんな大きい舞台で主役張るなんて…本当かっこよかった」

 

夏樹「夢だったからなぁ〜主演」

 

理玖「夢どんどん叶えてるんだ…かっこいいよ本当」

 

夏樹「そーいえばさぁ」

 

理玖「何?」

 

夏樹「理玖って、何になりたいとかある?将来」

 

理玖「あるある」

 

夏樹「え、あるの?」

 

聞いたことない、と少しショックを受ける夏樹。
仕方ないか、最近話してないし…

 

夏樹「何?」

 

理玖「…夏樹の…マネージャーやりたい…」

 

夏樹「…は?」

 

理玖「…って、夏樹に、相談しようって思ってたんだよね…」

 

理玖が照れ臭そうにはにかみました。

 

理玖「夏樹のこと…1番近くで、応援できるじゃん、ただ、励ますだけじゃくて、仕事として、ね?」

 

夏樹「……」

 

夏樹は口を開けて、ポカン…と固まったまま。

 

理玖「…変…な事言った?」

 

夏樹「嬉しくて…まじ…?」

 

理玖「うん」

 

夏樹「俺から事務所に話し通す」

 

理玖「いやいや、そんな…」

 

夏樹「やだ、絶対理玖がいいっ」

 

理玖「そう言うの?事務所の人に」

 

夏樹「そう、それで通るから」

 

理玖「それはやってみてほしい」

 

夏樹「…冗談抜きで、通るよ?」

 

それぐらい、大きな存在だ。と、理玖が想像できないぐらい、責任がのしかかっているにだろう。だから、だからこそ、一緒に夢、追いかけたい。

 

理玖「何年見てきてると思ってんだよ、本気だよ」

 

夏樹「だよね」

 

夏樹は嬉しそうに理玖の肩をぽんぽんとたたきました。

 

夏樹「…舞台終わったら、一緒に事務所行こ」

 

理玖「…ありがとう」

 

舞台終わりの楽しみができた夏樹。
この舞台、絶対最後まで成功させて、もっと、もっと大俳優になるぞ。

もうすぐ舞台は千秋楽です。

 

続く

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