壊れるまで

由莉の両親は由莉が小学生の頃に離婚しました。

 

お父さんもお母さんも大好きで、一緒に住めないなんて、絶対に嫌。

でも、黙って母親について行きました。

そして、再婚し、母親は2人子供を産んで、再婚相手と母親と子供2人、4人でとても幸せそうに暮らしている。
由莉は、気を遣って一人暮らしを始めたから、4人で新しい人生を歩めているに違いない。

 

よかったと思っている。自分の選択は間違ってないと思う。思いたい。

 

本当は、本当は、絶対言えないけど、母親と2人で暮らしたかった。

自分が我慢したら、みんな幸せになってる。

 

男友達も、自分が与えたら、一瞬でも幸せになっている、求てくる。

愛華だって、気持ちを伝えなかったから、今晴翔と幸せなんだ。

 

愛斗にはもらってばっかりだから、自分から何かしないと…そう思うけど、力になれてる実感はない。
むしろどんどん自分が愛斗に依存していく。

 

どうにかしなきゃ。

 

今日も頭の中にそんな考えを巡らせながら眠りにつきました。

 

 

夏樹「…前、愛斗さんが抱き締めてた方…彼女さん?」

 

最後の稽古を終えて、夏樹(FUYU)が愛斗の背中に話しかけます。

愛斗はこれから舞台セットを見に行きます。

いよいよ明日本番。

 

愛斗「…そう見える?」

 

夏樹「え、違うんですか」

 

愛斗「うーん…」

 

愛斗は付き合ってる…わけじゃないしなぁ〜と、答えないでいると。

夏樹はその反応に引いたよう。

 

夏樹「…嫉妬剥き出しみたいに抱き締められて…好きではないなんて言われたら人間不信になりますよ…おかしくなりますよ…かわいそう…ですよ」

 

愛斗「僕、悪い男?」

 

夏樹「自分で言うのダサいです。」

 

愛斗「うわ言うね」

 

 

向こうから好きって言われ、自分がいくら好きで愛しても、相手が苦しくなった、って言って自分の元から離れていく。

離れていっても、何も思わなかった。

 

由莉は正直最近苦しそう、でも、離れていかないし、それがたまらなく心地よい、自分も離したくない。

これも好きって言っていいのかな。

 

確かにダサい。この歳になっても好きで迷子になってる。

 

夏樹「…もしかして、それで踊れないんですか?」

 

愛斗「…え?」

 

夏樹「…いや、だって、お手本見せてくれないから…スランプかなんかなのかなって」

 

原因はわからないけど、スランプなのは本当。

手本を見せないの、自主性を持って欲しいからとかいって、騙せるって思ってたのに。

 

愛斗「…すごいね…御名答」

 

夏樹「…いるんですよ、よく、恋愛絡みでスランプになって潰れる人と…爆発してすげ〜人になるのと…」

 

愛斗「れ…恋愛絡みで…へえ」

 

他人事のように聞き流そうとしますが。

夏樹は愛斗を睨みつけるような目で、でも、綺麗な瞳で。

 

夏樹「愛斗さんは、どっちなんすかね」

 

子供の目は誤魔化せないな…

まさか、この子に見透かされてるなんて。

 

愛斗「…FUYUくん…ありがとう」

 

夏樹「…礼言われるようなこといってないですけど」

 

愛斗「ううん、

 

でも、壊れるまでは、一緒にいたい。

その手前でちゃんと離れてあげるから…

もう少し…もう少し。

続く

 

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