電話の裏には?
ブー、ブー愛華のケータイがなりました。愛華は急いで取ります。
晴翔『あい?由莉大丈夫だった、普通に元気』
愛華「そっか…よかったわ。はる、ありがとう」
晴翔『おう、由莉に代わる』
愛華「うん」
由莉『…愛華ありがとう心配してくれて』
愛華「なんでもなくてよかったけど、どうしてお休みしたの?」
由莉『えー…っと寝不足で…さぼっちゃった…って、きゃ!!!』
急に叫び声を上げる由莉。奥から晴翔の声もします。
愛華「どうしたの?!」
由莉『な、なんでもない』
愛華「だれかいるの?」
由莉『…ね、猫、猫預かることになって、その子がちょっと…暴れただけ』
愛華「猫ちゃん?」
由莉『そう…だから大丈夫。明日から行くから学校』
愛華「うん…」
由莉『晴翔に代わるわね』
愛華「うん」
晴翔『あい、後で六花大行くんだよね』
愛華「そうなの?」
晴翔『柚葆さんっている?』
愛華「…今隣にいるよ」
晴翔『俺の友達会いたいって言ってるから…授業終わったら顔かしてもらえるかな?』
愛華「ちょっと待ってね」
一回電話を離し
愛華「柚葆〜はるのお友達か柚葆に…」
柚葆「大丈夫でっす」(食い気味)
愛華「…大丈夫だって」
晴翔『よかった。じゃあ、行くから、正門で』
愛華「うん」
・
柚葆を連れて正門まで行くと、なぜかさゆりとりのがいました。
学祭の時晴翔を見つめていたさゆりの顔を思い出した愛華。隣にいるりののことは知らないなぁ…と見ていると、ずんずん近付いてくるりの、
りの「わー!めっちゃ可愛い!」
愛華「????」
さゆり「…この人だよ、晴翔の彼女さん」
りの「えー!まじ!通りで高い服着てると思った!」
愛華「……」
りの「すごい!全部ブランド!しかも肌真っ白だし、ほっそ!!ねぇ、全身にいくらぐらいかけてるの?エステとかどんぐらいいってるの??」
愛華「…???」
りのの勢いに黙ってしまう愛華。
フワッとりのの香水の香りが、あ、あの時、晴翔からしたいつもと違う香りと似てる…
愛華「どなた?」
りの「あ、私、さゆりんのお友達〜!晴翔くんが来てた合コンでさゆりんとも出会っちゃった!」
愛華「…合コン…」
りの「あれ!知らなかった?カワイソー!!じゃあ、大学の近くの女の人の家に出入りしてることも知らない??もしや?この辺通りかかった時見ちゃったんだよねー私達!」
柚葆「あんたねぇ。」
ドスの効いた声を出したのは柚葆。愛華がまあまあ、となだめます。
あのっ、さっきまでりのの後ろに隠れてたさゆりが口を開き。
さゆり「由莉さん?だっけ。愛華さんのお友達、晴翔とあの…関係持ってるんじゃないの?今日見た時…そんな雰囲気だった…」
愛華「…?今日は私が頼んで様子見に行ってもらったのよ?」
せき止められてた水が流れ出すように、今まで思ってた不満が流れ出てきます。
さゆり「学祭の時見たんですけど、距離…近かったし。男の子だったら…ああいう人近くにいたら…
愛華さん、晴翔大変なのにわがままいったり、無理させすぎだし、由莉さんに疲れ癒してもらってたんじゃないですかね」
柚葆「あんた…」
柚葆はヤンキースイッチ全開ですが、愛華がスッと抑え。
愛華「あなたは、好きな人でも疑うのね。」
愛華はいつも通りの涼しい顔で、少し呆れ気味に言います。
…バレてる…と思いつつも、さゆりは開き直って
さゆり「好きだから色々考えるんじゃないですか?愛華さんは無関心すぎると思います」
愛華「…疑ってるなら、本人に聞いてみたらいいんじゃないかしら?」
後ろを見ると晴翔とだいちが。
ヤンキーフェイスだった柚葆はパッと表情を変え、いつものあざと女子に
柚葆「ど、どうもぉ〜」
晴翔「…なんでお前らがいんだよ」
さゆりとりのを見て少し怪訝そうな晴翔。
りの「晴翔くん!だいちくんも!合コン以来だね!」
晴翔「わぁ、お前…」
りの「彼女さん知らなかったみたいじゃーん、お互い色々言えてない感じ?」
晴翔「…はぁ…」
だいち「…まあ、俺たちが無理矢理連れて来ちゃったようなもんだから…ごめんね、愛華ちゃん」
愛華「…別に…」
だいち「でも晴翔も息抜きになったでしょ?」
愛華「…息抜きにならないでしょ、疲れて帰って来てたし」
晴翔「え、知ってたの?」
愛華「急にぎゅーってした日でしょ?」
晴翔は目を丸くさせ、思い出し恥ずかしくなります。
晴翔「なんでわかるの…」
愛華「だいたいわかる」
違う香水が香ったから…なんですが。
晴翔のことはなんでも知っている、とマウントとっているように聞こえて少しイライラする
さゆり「晴翔は忙しいのに、またお迎え来てるんだね…だいちはなんでここに?」
少し棘のある話し方に晴翔は眉根を寄せ
晴翔「…俺は来たくて来てんだって。」
だいち「それに今日は俺が頼んで来てもらった、会いたい人いて」
柚葆「あっ」
柚葆はそうだ、私は晴翔くんのお友達に呼ばれて来たんだよここに。この女たちにメンチ切るんじゃなくて。
だいち「この前学祭で柚葆ちゃんのこと気になっちゃって…連絡先聞きたいなって」
柚葆は愛華に飛びつき
柚葆「わー!愛華ナイスハッピーキューピット」
愛華「なにそれ」
すぐさまだいちの前にケータイを差し出し
柚葆「私のでよければぁどうぞ?」
だいち「ありがとう、今度出かけよ?…今日これから空いてる?」
柚葆「もちろん❤︎」
だいち「よかった、寄り道しよ」
柚葆「はい❤︎」
だいちは柚葆と並んで駅の方へ歩いて行きました。
柚葆がくるっと振り返りグーサインを見せてきました。
愛華「ご機嫌そうで何より」
晴翔「…ま、大丈夫だと思うけど…あいももう帰れるの?」
愛華「うん、由莉に会いたいんだけど…」
晴翔「あー…由莉の家はちょっと行かない方がいいかも」
愛華「…なんで?」
晴翔「ほら、あの、猫がまじで凶暴で」
愛華「逆に心配なんだけど」
晴翔「由莉は手懐けてたから…」
愛華「…ふーん…」
晴翔「今日は帰ろ?」
愛華「うん」
歩き始めましたが、あ、そうだ、と振り返り
愛華「はるに聞きたいことあったんじゃないの?」
さゆりは晴翔に悪く思われたくなくて…見てたなんて言ったら引かれるんじゃないかと思い。
さゆり「…べ、別にない。」
愛華「…」
愛華は呆れた顔をして
愛華「あなた、卑怯ね」
晴翔の手を取り
愛華「いこ」
晴翔「え?あうん。」
サラッと言い放ち、晴翔の手を握り、髪をなびかせながら歩き出しました。
晴翔、キュンキュンしている場合ではないぞ。
2人が歩いて行った後。
りの「マウント取りすぎじゃない?案外必死なのかな!」
さゆり「う、うん…」
りの「すきありそうだし!いけるって!」
さゆり「そうかな」
さゆりは2人の間には誰も入れないのかなと思いつつ、でもやっぱり、学祭の時に見た、晴翔と由莉の距離感に何もなかったなんて思えないさゆりでした。
帰り道
晴翔「さゆり達なんで六花大にいたんだろ」
愛華「…通りかかったんじゃないかしら?」
晴翔「何話してたの?あい」
愛華「はるの話」
晴翔「え?俺?」
愛華「…はるって女の子からも人気なのね」
晴翔「いや?俺モテたことないけど…まーノリで告られたりはしたけど」
愛華「誰に?」
晴翔「さゆりの隣にいたピンク髪の人。合コンのノリで冗談だし、…って合コン行ってたの言ってなくてごめん…今度から気をつけるから…もう行きたくない…」
愛華「…それはいいんだけど、なんで冗談ってわかるの?」
晴翔「え、だって俺だし」
愛華「?」
晴翔「俺が本気で告白されるわけないじゃん」
ケラケラ笑っている晴翔。空手部主将、家事全般得意、高身長、お顔もスタイルも抜群なことはさすがにずっと一緒にいる愛華でもわかります。心配になり、質問してみます。
愛華「…はる、自分の自慢できるとこ言ってみて」
晴翔「え、やだよ恥ずかしい…」
愛華「いいから」
晴翔「…恥ずかしいけど…あいのこと1番好きでいること…ぐらいかな」
きゃー言っちゃった、と言わんばかりに顔を隠す晴翔。晴翔のあまりの自己肯定感の低さに唖然とする愛華。
愛華「…はる…それははるがかわいそうよ…」
晴翔「え、なんで?」
謙遜しているのではなく、本気で思っているんだ。
愛華は握っている晴翔の手を引っ張り、屈ませ、近くなったら顔をそっと撫でます。
火傷したら1番に触る耳たぶも、使い物になりません。
晴翔「え、え、あい?」
愛華「はるは、あいが大事にするからね」
晴翔「…そう言うかっこいいことは俺が言いたいのに」
愛華「…充分かっこいいわよ?」
晴翔の顔が溶ける寸前の鉄のように赤く熱くなります。
晴翔「…あいがそう思ってくれてるの…嬉しい…ありがとう」
触れただけなのにこんなに照れて真っ赤になる晴翔が影でコソコソするわけない。
けど、確かに由莉の家で今起こっていること、何か隠している…
愛華「…今日私のお部屋で遊びましょ?」
晴翔「い、今は無理!!!」
こんなに勢いよく拒否されたのは初めて。
愛華「…なんで?」
晴翔「ごごごごめん、行きたいんだけど、と、まらなく、なりそう…だから…」
愛華「なにが?」
晴翔「~~っっ今日はお家に帰る!夜遅いし!」
愛華「まだ昼よ」
晴翔「一旦頭冷やしてくるから、ね、まってて」
愛華「…わかった」
晴翔は勢いでしたくない、大切にしたい…と早とちりしているのですが、
愛華は今日のこと、ただゆっくり聞きたいだけ。
疑っているわけではないのですが、何があったか聞きにくい愛華でした。
続く