電話が終わり、教室に戻ると、
女子生徒たち「金山くん!これ受け取ってください!」
5人組が揃って裕翔に貢物。
裕翔「えっとー…」
女子生徒「ずっと応援してました!」
女子生徒「怪我良くなりますように!」
裕翔「ども…」
女子生徒が並んできゃーきゃー言いながら去っていった。
裕翔「…嘘くさ」
友達「そんなこと言うなよ」
裕翔「応援してくれるのは嬉しいけど…」
もらったプレゼントの中身をゴソゴソ。
裕翔「タオルだ」
友達「お!好きな子からもらって嬉しいやつ?」
裕翔「昨日の朝放送されたんだっけ」
テレビの取材を受けたの、
なんかもう懐かしい。
夏樹さんからタオルもらったし、
こんなに使えないなぁ。1人じゃ。
友達「ファン増えたんじゃね??」
裕翔「そんなんいらねー…空手強くなるわけじゃねーし」
友達「選手になるんだったら大事にしなきゃ!タオルだっていくらあってもいいだろ?」
裕翔「そうだけど、試合に持ってくタオルは…一つでいいわ」
裕翔はとりあえずカバンにタオルを詰めました。
・
裕翔「すみません、迷惑かけて」
夏樹「…全然、私は大丈夫」
今回の盗撮写真の流出のお詫びがしたいと連絡がきた。
律儀だな。
仕事で疲れて、がっつり食べたくて、ラーメン食べ行こうと誘った。
大丈夫といったものの、ほんとは結構やばい。
今こうして誰かにまた写真撮られて、アップされたら、今度こそ学校行きにくくなる。
でも、それよりも、会いたかった。
裕翔「今日は奢りです」
夏樹「いいの?やったー」
裕翔「でも、ほんとラーメンでいいんすか」
夏樹「え、なんで?」
裕翔「や、なんか、可愛いもの好きっぽいから」
あ、やば、女の子だ今。
男の子と放課後会うって言って、ラーメン選ぶ女子、あんまりいない?
ラーメンどうしても食べたくて、
わすれてた。
夏樹「ら、ラーメン好きだもん…」
裕翔「ほんと?餃子は?」
夏樹「いる」
蒸し暑い店内。
冷たい水をごくごく。
喉乾くなぁ。
店員「はいお待たせ〜」
裕翔「ありがとうございます」
夏樹「あ、ありがとうございます」
つられてお礼を言う夏樹。
うまそ〜と嬉しいそうな裕翔。
いただきますと小声で呟き、
気持ちいいぐらい思いっきり麺を啜ります。
夏樹は裕翔をみて口元が緩みます。
裕翔「ん?なんすか」
夏樹「べ、別に」
裕翔「ふーん」
大した話しないで黙々食べた。
味なんか正直良くわかんなくて、
美味しそうに食べる裕翔の顔だけ、はっきり覚えている。
・
たくさん食べて大満足そうな裕翔。
外の風が気持ちいい。
裕翔「うまかったですね」
夏樹「そうだね」
裕翔「また行きましょう」
夏樹「あのさ、敬語じゃなくていいんだけど」
裕翔「え、先輩だし…一応」
夏樹「一応って何」
裕翔「ちーせーし」
夏樹「女子の中ではでかいだろ」
裕翔「え?」
裕翔は上から下まで確認し
裕翔「そうか?」
夏樹はぽかぽか裕翔をはたきます。
裕翔「冗談ー」
夏樹「はらたつ」
この心地よい関係も、壊すも続けるもの、自分次第だからな。
裕翔はなに考えてるかあんまりわかんないけど、
きっと仲良くなりたいとは思ってくれているはず。
由莉「あれ?裕翔?」
裕翔「由莉ちゃん?」
ラーメン屋さんが、愛斗のバレエスタジオの近くだった。
愛斗と仕事帰りにご飯食べようとなり、近くを通りかかったとか。
ちょっと照れてるような裕翔。
夏樹は由莉を睨みつけます。
由莉「…あ、あの時のギャル」
裕翔「…え、由莉ちゃん夏樹さんのこと知ってるの?」
由莉「まあ、たまたま…」
夏樹は裕翔の腕をぎゅーっと組み、
それにも驚く裕翔。
由莉はにやっとして2人を見比べます。
由莉「裕翔、やるわね」
裕翔「う、うるさいな…」
由莉「へー、別にそんなんじねーしとか言いそうなのに…」
裕翔「もう、やめてって」
由莉「仲良くね〜高校生」
由莉はひらひら手を振り、
向かいから愛斗が、
2人に気づいた愛斗は目を丸くしてから、
にこっとして由莉と歩いて行きました。
裕翔「愛斗くん…めっちゃ久しぶりに見た」
夏樹は愛斗くんとも知り合いなんだ、裕翔くん…
全てを察っされたな。
大人だから、何も言ってこなかったけど。
2人に見られたことより、
夏樹「裕翔くん、あのお姉さんのこと見て赤くなってたよね」
裕翔「べ!別になってねーし」
夏樹「ギャルが好きなの?」
裕翔「いや……」
夏樹「好きじゃん…」
裕翔「悪かったな」
由莉は会う人の中で1番色っぽくて、
密かに憧れだけ抱いていた。
どうなるとかじゃなくて、
裕翔「芸能人的な感じ、由莉ちゃんは」
夏樹はここに本物の芸能人いるんですけどーと思います。
夏樹「ボンキュッボンだね、あの人」
裕翔「な、何言ってんの」
夏樹もギャルの格好でよかった、ぺたんこだけど。
愛斗さんの女、いい女そうだし、男はみんな好きだよね、あの感じ。
・
だいち「…何してんの」
夏樹「いい感じに風船膨らまなくて」
だいち「お前さ、バレたと同時に芸能人生終わらせる気なの」
夏樹は至って真剣、
だいちは呆れたように風船の空気を抜きます。
だいち「ドラマめっちゃ好評だし、波に乗ってんだから」
夏樹「夏樹は、何も変えてないけどね」
だいち「じゃあ、お前は天才だな」
夏樹の頭をわしゃわしゃと撫でるだいち、
やめろよ!と振り払おうとする動きが赤ちゃんみたい。
こんなに大きくなったけど、
まだだいちの中では赤ちゃんのまま。
一生懸命な夏樹、どうにかして、幸せにならせてあげたい。
だいちにはどうにもできないことだけれど。
続く