とりあえず、どうにかして兄と千奈をちゃんと話し合わせなきゃ。

と、千奈の病室のドアを開けると

芽衣「えー!もうすぐ出産じゃないですか!!赤ちゃん服とか買い行きましょうよ!」

井間「…め…」

どさどさと驚きすぎて持っている荷物を全部落としてしまいます。

芽衣「ちょっと、大丈夫???」

井間「…ぜんぜん」

大丈夫じゃない。

え?芽衣が千奈と談笑してる?
なんだこれ

千奈「たかちゃんのお友達いい子ね!」

にっこり笑う千奈に苦笑いを向ける井間。

どう言う状況…?

ゆきひろ「千奈ぁぁぁぁぁ!!!」

病室に凄まじい勢いで飛び込んできたのは

千奈「…ゆきひろ??」

芽衣「…誰?」

井間「…兄さん」

芽衣「ええ?似てない…」

作業着のまま、ボサボサで現れました。

千奈「なんでずっと連絡無視するの!!」

ゆきひろ「会社大事な時期で…」

千奈「赤ちゃんが産まれるのよ?!?!もうすぐ!」

ゆきひろ「え?そんなにもう?うそ」

千奈「嘘じゃない!もー!」

ゆきひろ「ご、ごめんって…」

いつも気まぐれ、いいところにやってくる兄。
千奈もなんだかんだで嬉しそう。

井間はぼーぜんとその様子を見つめて言葉が出ません。

芽衣「井間さん…いこ?」

芽衣な腕を掴まれ病室をずるずる出ました。

なんで芽衣が病室に?
なんであんな捕まらなかったゆきひろがあっさり?

そんなことよりも芽衣が隣を歩いていることに涙が出てきそう。

井間「芽衣ちゃん…」

井間が名前を呼ぶと、凄まじい勢いで頭を下げる芽衣。

井間「え、ちょ」

芽衣「いきなり現れてごめんなさい、どうしても、ちゃんと、話したくて」

背中を押してくれたのは、愛華と柚葆。

半ば強制的に、話つけてきたから、あとは突撃。と。

井間「…俺も、俺が言ったことだけど…話したくて」

芽衣「ありがと」

井間「いこっか…あ、ごめんうちじゃだめか」

いつもの癖で一緒に帰ろうとしてしまった。

井間「近くのカフェ…」

芽衣「いや、井間さんの家行きます」

・ 

井間「はい」

芽衣「…ありがとう」

温かい紅茶。レモンの入った。これ、私が好きっていったやつ。
ちょっと安心。

井間「…兄さん、よくきたよね、びっくりしたんだけど」

芽衣「あ、なんかね、愛華の会社の…協力してもらってる会社みたいで」

井間「あ、そっか、建設系…下請けか、兄さんとこ」

芽衣「愛華が行くように…あ、圧力を…」

井間「…ご令嬢パワー…使ってくれたんだ…」

芽衣「そう、」

井間「すごいね…」

つい昨日まで家みたいにリラックスしていた場所なのに
なんだか緊張する。

井間さん、もう一度、付き合お?
別れるのやめよ?

とか、軽く言えば…うん、そんな嫌われることしてないはず。
きっと、話せば…なのに

ドキドキして、言葉が出てこない。

本当はどこか…嫌いになっちゃったかな…

余計な不安まで、襲ってきて、涙が出てきそう。
こんな思い、今まで…したことなかったのに…

井間「…芽衣ちゃん…ごめん」

沈黙を破ったのは井間。

井間「うちの家族のこと巻き込んで、芽衣ちゃんより、そっち優先して…流石に、うんざりしたよね」

芽衣「してない、してないよ?本当に…」

井間「芽衣ちゃん、ほんとのこと言ってよ」

芽衣「ほんとだよ?全然…」

井間「他の女の子こと…抱きしめててもなにも思わない?」

芽衣「…え?」

井間「…うんざり…してよ」

芽衣「…でも、家族でしょ」

井間「怒ってよ、他の女に触らないでとか、いってよ、」

芽衣「…嫉妬してってこと?」

井間「…って、思ってた。」

芽衣「…てた。なの?」

井間「…でも…えっと…今は…」

芽衣のこととなると、言葉がすらすら出てこない、
思いと言葉が噛み合わない。
今更綺麗にカッコつけた言葉を選ぼうとしてる。

嫉妬されて、安心したかった、自分のエゴ。

でも結局、悲しい顔させて、自分が情けなくなって…

そんなカッコ悪いこと、どうオブラートに包める?

今までの彼女にもそうだった、
嫉妬されて、ちゃんと好きだよって言って、でも、結局つぶれて彼女が辛くなって、別れる。

嫉妬しない芽衣が楽だった。
でも、だんだん不安になった。
本当に好き?って

自分から好きになったの…そう言えば初めてだったかな。

初めはスマートにできてたのに、段々もっと沼にハマっていくようだった。

今までこう言う気持ちにさせてたの、かな。元カノたちに。
おこがましいけど。

井間は眉間に皺を寄せて、少し唇を噛んでいる。

何か考えてる…
井間は自分が悪者になるように考えがち
芽衣は分かっていた。
相手を悪く言わないし、文句とかも飲み込んでしまう。
だから、井間の本音が見えない時がある。
こちらも、本音言わなきゃ。

芽衣「私ね、井間さんと付き合えてラッキーぐらいにしか思ってなかった、別に好きとかなかった。」

井間「え?」

あ、この顔はさせたくなかった。
好きとかないはよくなかった。
しょんぼりした大型犬の顔。
でも、ぶつけさせてもらう。

芽衣「イケメンに好きって言われて、紳士で、完璧だから
だから、いつもみたいにすぐ振られても、楽しかったー…で終わってたと思う…最初だったら」

井間「…うん…」

芽衣「でも…井間さんが、ご家族のこと大事にしたり、私が別れよっかって一回言った時の寂しそうな顔とか?」

井間「その顔は忘れてよ…」

芽衣「ははは…そういうところ、なんだろ、優しいんだなぁって、嫉妬して欲しいとか、可愛いこと考えてるのも、全部、大好きで…初めて、振られて泣いちゃった…」

井間「…初めて?」

芽衣「いつのまにか、本当に大好きになってた。隣に居られないって考えたら、涙出ちゃう」

井間「俺、優しくないよ?」

芽衣「え〜?どこが?」

井間「芽衣ちゃんがなんでも許してくれるから、他の女より楽だとか思ってたのに、段々少しは嫉妬してほしいとか思ったり、ちょっとは悲しい顔しろよ…とか、思ったり、ね、自分勝手」

芽衣「おお…」

少し口の悪い井間にさえドキッとする。
素が見えたような気がして、ちょっと嬉しい。

井間「思ってたけど、昨日、千奈の病室で、目あったとき、悲しそうな顔してて…俺も苦しくなった。違う、こんな顔見たかったんじゃない…幸せに…幸せな顔、させたかったのに…って」

芽衣「あれは…ただ、家族愛だなぁ…って感動してただけなのに」

井間「…芽衣ちゃんの心綺麗すぎ…俺めっちゃ腹黒いじゃん」

髪の毛をかきあげてため息をつく井間。

芽衣「腹黒い井間さんも面白いけどね」

井間「…かっこつけてたのに…」

芽衣「へへへ、おもしろ」

急に芽衣の手をぎゅっと握る井間。
心臓が飛び跳ねる。

井間「…別れようって言って、芽衣ちゃん泣いて、後悔した」

芽衣「…ほんと?」

井間「芽衣ちゃんのこと、好きなのに…大好きなのに」

井間は芽衣抱き寄せて

井間「…もう一回…付き合ってくれる?」

芽衣「当たり前、大好きだもん」

井間「…芽衣ちゃん…」

より、強く芽衣を抱きしめます。

井間「大好き…」

芽衣「私ね、こんなに好きになったの初めて」

井間「…俺も…」

井間は芽衣の頭に手を回し、そっと唇を重ねました。

あったかい、井間さん…

何度も重ね、次第に深くなっていく。
口の中が、思考が、井間一色になるよう。

芽衣「い、井間さん…」

井間「たかひろって呼んで?」

芽衣「え?そ、その…」

井間「…お願い、ねぇ」

そんな甘い声で言われたら、照れて余計言えないよ
熱い瞳でじっととらえられます。

芽衣「た、た、たかひろ…くん」

井間「…ふふ、芽衣、ありがとう」

不意の呼び捨てに心臓がビクッと跳ねます。
と同時に後ろに押し倒されます。

芽衣「きゃっ!」

ギシッと跳ねるソファ

そのまま、また、口を塞がれる。
指を絡ませ、反対の手で身体をなぞられます。

芽衣「ん…たかひろくん…」

井間「今日は我慢できないわ…」

芽衣「わぁ!!」

軽々持ち上げられた芽衣。
身長が高い芽衣はこんなふうに抱き上げられるのほぼ初めて。
隠れて憧れていたけれど。

芽衣にまた優しくキスをしました。

小鳥の声が聞こえる。

これが世に言う朝チュン。
本当にチュンチュン言うじゃん…

少し顔を上げるとすぐに井間の顔が、
こ!これは!腕枕だぁ!!
すらっと見える井間も、腕が結構がっしりしてて…それから…
昨日のことを思い出すとまたドキドキしちゃう…
あんまり考えないようにしよ…
朝だし…

井間「どしたの?バタバタして…」

ぽやぽやした顔の井間がこちらを見つめていました。

や、やばい、これが学校1モテる男の朝…色気が…

まともに目を合わせられず、と言うかどこを見ていいか分からず、バタバタしていると、
ぎゅっとそのまま抱きしめられます。

井間「…痛いところない?」

芽衣「…し、心臓が…」

井間「え?!」

芽衣「ドキドキしすぎて…ちょっと痛い?」

井間「…もう…朝から可愛い…」

ちゅ…わざと音を立ててキスをしたのだろう。
より鮮明に、思い出しちゃうじゃん!!

と、急に視界が暗く。

いつのまにか井間が覆い被さっていた。

芽衣「…え?」

井間「ねぇ…しよ」

唇が重なり、また、とろけたた気分に。

芽衣「こ、講義は?」

井間「午後から…芽衣ちゃんは?」

芽衣「ん…私も…そう、あ…」

首に顔を埋められ、井間の髪がふわふわ当たる。
耳元で、とびきりの甘い子で

井間「じゃあ…ゆっくり可愛がれるね…」

また2人は深く愛し合いました。

 

続く

 

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