晴翔「よいしょ」
散らかしてしまった部屋を片付けた。
本棚を倒すなんて怪力だろ、とか1人で突っ込み入れたり。
愛華「本棚倒すなんて、晴翔力持ちね」
本棚を元に戻す晴翔の後ろから愛華がひょこっと顔を出した。
晴翔「…今俺もそれ考えてた」
愛華「あら」
晴翔「たまに考えてること被るよね」
愛華「誰よりも一緒にいるし、ママとパパに言えないこともお話ししてるもの」
晴翔「…あいの父さんと母さん、帰ってこないの?」
愛華「…もういいのよ、あんまり会いたくないわ」
晴翔「…寂しくない?」
愛華「はるがいるから、それで十分」
晴翔は嬉しいけれど、寂しい気持ちになった。
家族がバラバラ…ってどう言う気持ちになるんだろう。
晴翔にもわからない愛華の本当の思いがあるはず。
自分は絶対、愛華から離れていかないよ。
・
今日はお弁当の作り置き久々に作ろう。
キッチンに立つと母がリビングに入ってきた、そのまま冷蔵庫の飲み物を取りに来ました。
晴翔の母「晴翔…」
晴翔「…ん?」
晴翔の母「体調、まだ良くないの?」
晴翔「…ま、前よりは、平気」
晴翔の母「…そっか」
会話が途切れ、ザクザク野菜を切る音がします。
晴翔「あ、部屋、ちゃんと片付けたから、驚かせてごめん。」
晴翔の母「ううん、裕翔がビクビクしてたけど」
晴翔「裕翔にも謝んなきゃ」
ささっと皿に野菜を避けて、肉を切り始めます。
晴翔「心配かけてごめん」
晴翔の母「…病院…いったのね」
晴翔「うん。」
晴翔の母「治るの?」
晴翔「わかんない、治さなきゃって思いすぎても、焦るだけで、良くならない」
晴翔の母「難しい…」
いつも通りと意識しすぎたぎこちない会話。
家具にも呆れられて、手助けはしてくれないよう。
晴翔「だから」
晴翔は一度手を止めて
晴翔「見守ってて…俺なりに、頑張ってる」
晴翔の母「そっか…」
晴翔の顔をむにーっと摘み
晴翔の母「甘えていいのよ?子供なんだから」
晴翔「うるせえ触んな」
本音は軽くあしらわれた。
頬の肉が前よりなくなってる。成長でというより、痩せて。
あの頃の柔らかいままなのに。
目の前にいる晴翔を本当に見てなかったんだな。
晴翔の母「愛華ちゃんとずっと一緒にいたの?」
晴翔「は」
晴翔の母「晴翔が社長とかになれば結婚できるんじゃないの?」
晴翔「なんの話?」
晴翔は照れ隠しで肉と野菜を炒め始めました。
晴翔の母「だって、晴翔は自慢の息子だから〜」
晴翔はふふ、と鼻で笑い。
晴翔「調子いいこと言うな」
自分の息子は立派な子に、正しい道に。そう思って窮屈にさせてしまった。
色眼鏡を外して、そのままの高校3年生の息子ってみたら、少し近づけた。気がした。
だけ。
母親のしょーもない悪ふざけにのってくれる、大人な対応を見せる息子の背中が遠く感じた。
ここからは親の敷いたレールから離れて進んでいく晴翔を見守っていこう。
かんばれ晴翔。
続く