昼休み、図書室で熱心に本を読む愛華。

由莉「あ…本読んでるの、珍しい」

愛華「…うん」

由莉「…何読んで…」

全部、精神疾患のことや、パニック障害のこと。本が山積みになっています。

由莉「…晴翔、心配?」

愛華「…辛そうで…やっぱり」

由莉「優しいね、愛華」

愛華「…優しくないわよ…なにも、わからないもの」

由莉「わかろうとしてるのが、すごいと思うよ?」

愛華「…どう言う症状出るか、どう言うことしたら軽減できるか、だいたい覚えたの」

由莉「すごいじゃん」

愛華「知り合いのね、お医者さんにもたくさん話聞いたの、もっと専門的なこと、本に載ってないようなの」

由莉「…うん」

愛華「…でも…何もわからないの。はるの気持ち、何もわかってあげられない…どうして、こうなっちゃったのか…全然…」

由莉「人の気持ちはわからないよ、寄り添うのが大事」

由莉はおまじないをかけるようにおでこをくっつけ、大丈夫。と言いました。

 

コンコン

ベランダから聞こえた。

体が重くて、起き上がれない。
寝ていると言うか、まだ沈んでいるよう。

愛華「はるー、そのままでいいよ」

愛華の声が窓越しから聞こえた。

愛華の家と晴翔の家はお隣。しかも部屋も同じ2階でベランダから梯子を使えば行き来できる。

危ないからやめてと言ってもやめない。

愛華「今日ね、学校でね…」

愛華はいつもの他愛もない話を続けた。
日が暮れるまで、可愛い小鳥のさえずりのようなおしゃべりが聞こえた。

晴翔は一言も声を発せなかったけれど。

愛華「また明日ね」

次の日もその次の日も、愛華は欠かさずベランダでおしゃべりを続けてくれた。

 

 

ある日。暮れても『また明日ね』が聞こえなかった。
時計を見るともう24時近かった。

自分が寝てて、聞き逃したかな。

体をゆっくりと起こし、カーテンを開けてみた。

愛華ももう寝てるかな。
愛華の部屋の方に目をやると、
電気は消えているが、カーテンが開いたまま。

寝る時はカーテンを閉めているのに…

ガラガラガラ
気になって窓を開けてベランダに出ると

晴翔「…!…あい…?」

窓にもたれかかったまま、ちゃ今度座り、すやすやと眠る愛華が。

おしゃべりをしてて、そのまま寝ちゃったのか。

晴翔「あい…?起きて?風邪ひく…」

ゆすっても起きる気配が全くない。

頬が赤く、冷たかった。
寒かっただろうに…風邪ひいちゃうよ…

何もしてあげれないのに…なんで。
幼馴染が、こんな状態になって可哀想に思ってくれたんだろう。

晴翔「優しいな…」

その優しさに苦しくなる。

晴翔は愛華を抱き上げました。

晴翔「…っしょ」

ひょいっと持てたはずなのに、
ちょっと力まないと持てなくなっていた。
弱くなってる…

すっかり冷えてしまった愛華を温めながら、愛華の部屋へ運びました。

続く

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